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2023年11月22日

ラリージャパンに来場者53万人超 運営側の〝カイゼン〟大きな効果

19日に閉幕したラリージャパンの来場者数は、4日間で延べ53万6900人にのぼった。今年は主催者に愛知県豊田市も加わり、豊田スタジアム(愛知県豊田市)内に特設コースを設置するなどして前回よりも観戦機会を増やした。レースの様子を間近に体感できるのがラリー最大の魅力だが、運営側の〝カイゼン〟もあり、より多くのラリーファンが世界トップドライバーの走りに熱狂した。

WRCの国内開催は昨年、12年ぶりに復活し、それまでの北海道から中部地方へと競技の舞台を移した。ラリー競技は、一般道などを閉鎖した競技区間の「スペシャルステージ(SS)」と、SS間の公道を交通法規を守って移動する「リエゾン」で構成される。今回、最大の見どころとなったのが豊田スタジアム内でのスーパーSS(SSS)だ。普段はサッカーなどの競技が行われる同スタジアムの芝をすべてはがしてアスファルト舗装し、専用コースをつくった。

通常のSSは1台ずつ走ってタイムを競うが、豊田スタジアムのSSSでは2台を同時に走らせた。豊田市の担当者は「前回、スタジアムには6万人が訪れたが、競技を観戦することができなかった。今回はSSSを設置したことで観戦人数は一気に増えた」と話す。今回、有料観客席の来場者数は9万300人で、このうちスタジアム内は6万7600人だった。

大きくカイゼンを果たしたもう一つの区間が、岡崎中央総合公園(同岡崎市)で開いた岡崎市SSSだ。前回は乙川河川敷(同市)で開催したが、ラリー車両が疾走すると砂煙が舞い、競技の様子が見えなくなる問題が発生した。今年は、広大な敷地を持つ公園内の舗装路をコースに選び、観客が競技をより堪能できるよう工夫した。

新たな取り組みとして、ヘリコプターを活用した観戦スタイルにも挑戦した。サーキットを周回するレースと異なり、ラリー競技はSSが広くエリアに点在する。ラリージャパンのSSとリエゾンは、5市1町にまたがる約970㌔㍍にも及ぶ。

フィンランドなどでは、ヘリを使ってSS間を移動する観戦スタイルが定着しているが、日本では法規やコストが課題となっていた。今回、豊田市は5カ所のヘリ発着場所を確保し、試験的に1組だけ観戦ツアーを組んだ。来年以降、ヘリを増やすなどして富裕層向けのプログラムを用意する計画だ。担当者は「ヘリを活用したホスピタリティープログラムで上げた収益を、子どもの招待費用などに充てたい」と語った。

モータースポーツでも脱炭素化の流れが進んでおり、WRCでは最上位クラス「ラリー1」でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)燃料が昨シーズンから利用されている。今回のラリージャパンでは、太陽光発電やトヨタ自動車が提供した水素発電システム、グリーン電力の購入などによって、メイン会場である豊田スタジアムで用いる電力の脱炭素化を図った。トヨタは、このスタジアムで行われたデモランで、二酸化炭素(CO2)をほぼ排出しない水素エンジンを搭載したレーシングカートを走らせ、レース活動で磨いた脱炭素化技術を披露した。

世界の走りを身近に感じてもらおうと、主催者をはじめとするさまざまな努力が結果に結びついたラリージャパンだった。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月21日掲載