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自動車産業インフォメーション

2023年11月13日

部品メーカー各社 電動自転車開発へ、脱炭素やMaaSで注目高まる

自動車部品メーカーの間で、電動自転車の製品開発に乗り出す動きが活発だ。駆動モーターや変速機、軸受などの技術を生かして新たな事業の柱にすることが狙い。脱炭素化の潮流やMaaS(サービスとしてのモビリティ)の進展で電動自転車をはじめとする小型モビリティへの注目度も高く、部品各社も早期の事業化に力を入れている。

ミネベアミツミが開発中の電動自転車用パワーユニットは、モーターやコントロールユニットなどの基幹部品を一体化した。ペダルを漕(こ)ぐ際の「踏力」をセンサーで検知し、自転車利用者の踏力に応じてキメ細かくモーターがアシストする。DCブラシレスモーターやボールベアリングなど、ユニットを構成する部品や技術は全て車載用で培ったものだ。担当者は「自転車以外の小型モビリティとも相性が良いため、今後、本格的に参入する」と意気込む。

日本精工も車載用軸受の技術を応用し、電動自転車ドライブユニット向け製品を開発中だ。電動自転車は普通の自転車より重く、駆動部をどれだけ小さく、軽くできるかが開発のカギとなる。同社は省スペース化や小型化にこだわって開発を進めている。

ジヤトコが24年に量産化を検討している電動自転車用ドライブユニットは、モーターに変速機構を組み合わせたことが特徴だ。発進時や上り坂など、状況に応じて3段階で変速する。同社主力のCVT(無段変速機)は、電動化に伴って中長期的に需要減が避けられない。電動自転車向けユニットを新規事業として育てていく。

水素技術を用いた次世代型の電動自転車も登場した。トヨタ紡織は、持ち運べる小型の低圧水素タンクを用いた燃料電池(FC)アシスト自転車の製品化を30年頃に目指している。トヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」の燃料電池(FC)部品やエアフィルターの量産技術が生きており、温める必要がある水素吸蔵合金タンクと冷却が不可欠なFCスタックを水冷システムでつなぎ、システム全体を小型化した。

市場調査会社、フォーチュン・ビジネス・インサイトが今年5月に公表したレポートによると、22年に374億7千万㌦(約5兆6千億円)だった世界の電動自転車市場は、30年には1197億2千万㌦(約18兆円)規模に成長する見通し。

フォーチュン社はまた、電動自転車が周囲の車両とつながる車車間通信の需要も伸びていくとみている。パナソニックグループが開発した「ITS(高度道路交通システム)搭載サイクルモビリティ」は、電動アシスト自転車のモーターやバッテリー周辺に通信機器を取り付け、交差点などでの車両接近を通知する。「ジャパンモビリティショー2023」では、音声とハンドル上の小型モニターが車両の接近を通知し、出合い頭の衝突事故を回避するデモンストレーションを行った。25年度の市場投入を目指す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月11日掲載