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2023年11月07日

架装メーカー各社 モビリティショーでひと・環境に優しい車体を提案

架装メーカー各社は、5日に閉幕した「ジャパンモビリティショー2023」で「人」と「環境」に優しい製品・技術群を公開した。これらの開発に取り組む狙いは、物流業界が直面するドライバー不足とカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)への対応にある。各社は自動化技術などを用いて、年齢・性別を問わず誰もが扱いやすい〝優しい〟車両や架装物をデザイン。さらに、リサイクル材の活用をはじめ生産手法の見直しによって、二酸化炭素(CO2)の排出量削減を図るヒントを提案した。

架装メーカーなど316社が加盟する日本自動車車体工業会(車工会)の展示ブースでは、会員10社が開発品を含む製品を披露した。

まず、ドライバーの業務負荷軽減に向けて日本トレクス(高崎文弘社長、愛知県豊川市)は「スワップ冷凍バンボデー」を提案した。車両のボディー(コンテナなど)とキャリア(トラック本体)が車両の操作だけで切り離せるため、複数ドライバーがボディーをリレー輸送する「中継輸送」が可能となり、1人のドライバーで長距離運送することがなくせる。

さらにスワップボディーでは、荷物の積み下ろし作業をドライバーに替わり荷主側で行うことが可能となり、ドライバーの作業負担軽減、労働時間短縮につながると見込む。けん引免許不要で大型免許で運転できることもポイントだ。

同社開発部の松田昌万課長は「(切り離し後の)ボディーを支える6本の支持脚にガスダンパーを内蔵して操作性を高めるなど、よりドライバーに寄り添った構造を検討していきたい」という。支持脚は鉄製で重量があるため、ダンパーを利用して動きを軽くし、女性や高齢ドライバーにも収納しやすい構造として利用者を拡大したい考えだ。

ドライバーの作業負荷軽減に向けて、キャリアカー最大手の浜名ワークス(田村元社長、浜松市浜北区)は「3台積み自動移動フロア」の搭載車を初公開した。一般的なキャリアカーは高所に積んだ車両への乗り降りや固縛作業が多く、扱える人材が限られる。新たな車両は、ボタン操作だけでフロアが微調整しながら自動で移動し車両を積み込むため、高所作業や不安定な姿勢での作業が不要となる。未経験者や女性も扱えるため、キャリアカードライバーの成り手不足の解消につながるとする。すでに一部で利用が開始されたという。

架装メーカーのトノックスは、ブルースカイテクノロジー(矢島和男社長兼CEO、神奈川県厚木市)およびエイチワン、都筑製作所(栗田有樹社長、長野県坂城町)、山田製作所(佐藤賢社長、群馬県伊勢崎市)の4社が設立した「超小型EV技術研究組合(METAx)」と共同製作した超小型電気自動車(EV)「クロスケ」を初公開した。二輪車と四輪車の間を埋めるモビリティという位置付けながら、90㌔㌘の積載量を確保した。

普通運転免許で運転可能。METAxのプロジェクトリーダーで、ブルースカイテクノロジー開発部の竹村洋之シニアマネージャーは「『(運送ドライバーへ)愛せる車両と楽しい仕事を届けたい』という思いで開発した」という。その思いは車両の小型で丸いフォルムのかわいらしいデザインで表現。女性も運転しやすいデザインとなった。

足回り部品は、登録乗用車に使われる技術を総動員して設計・開発し堅牢に仕上げたという。竹村シニアマネージャーは「安心して乗車できる」と強調する。短距離ドライバーの採用拡大への寄与を期待する。

環境配慮をPRしたのは日本フルハーフで、リサイクルアルミ材を使った「グリーンボディ」を初披露した。大型ウィングボディーでアルミ材の水平リサイクルは、業界初という。従来のウィングボディー製造では、1台当たり9・7㌧の二酸化炭素(CO2)を排出するが、グリーンボディでは8割強減らし1・4㌧に抑えた。

日本軽金属ホールディングスの取締役を兼任する日本フルハーフの田中俊和社長は「(車体向けにもリサイクルアルミの利用が)技術的に可能になったため、当社が先陣を切らなければいけないという思いで開発に取り組んだ」と力強く語った。

物流・輸送業界は足元のドライバー不足に加え、他産業と同じく脱炭素の取り組みが必至となっている。いずれも一筋縄ではいかない課題だが、各社は新しい技術と手法を駆使して、解決の歩みを着実に進めていく構えだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月6日掲載