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2023年11月06日

モビリティショー、サプライヤー各社 環境配慮の製品・技術を多数公開

「ジャパンモビリティショー2023」では、自動車部品メーカー各社が環境に配慮した最新の製品や技術を提案した。自動車メーカーが製造カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)への対応を急ぐ中、部品各社も二酸化炭素(CO2)の排出を抑えた開発が求められているためだ。欧州連合(EU)の環境規制「ユーロ7」やPFAS(有機フッ素化合物)規制をにらんだ開発も進む。

ホンダが初公開した「サステナ―Cコンセプト」には、同社と三菱ケミカルグループが共同開発中の自動車ボディー用アクリル樹脂材料が使用された。開発品は再生アクリル樹脂を使用しており、資源循環による廃棄物削減に貢献すると見込まれる。また、透明なアクリル樹脂は、着色剤を配合することでさまざまな色をつけられる。塗装工程が不要になるため、CO2排出削減につながるという。外装部品に求められる耐衝撃性などについては、ゴム粒子を添加することで確保した。

曙ブレーキ工業は、製造工程でのCO2発生量を従来品比で半減するブレーキパッドを開発中だ。一部原材料の見直しと、「塗装焼付け」「加熱処理」の工程を統合するなどして実現した。パイロットラインで量産し、まずは年内に市販向けとして販売する。2025年をめどに量産設備を設置し、自動車メーカーへの供給も目指す。

同社はまた、ユーロ7でブレーキダスト(粉じん)の排出規制値が25年から設けられる見通しであることを踏まえ、粉じんの排出を抑制する摩擦材の開発にも取り組んでいる。参考展示した「硬質コーティングローター向け摩擦材」は、制動力を犠牲にせず、パッド摩耗性を半減させる効果を得られたという。サーキット走行も想定し、低温時から高温時まで安定したブレーキの効きも確保している。

欧州の「PFAS規制」に対する関心も高まる。PFASの一種であるフロンは大気中に放出されると温暖化への影響が大きく、オゾン層の破壊につながる。自動車用冷媒にも利用されてきたが、1990年代から代替フロンへ転換が進んできた。今後は、さらに「地球温暖化係数(GWP)=CO2を1とした場合の温暖化効果の尺度」の小さい「グリーン冷媒」が求められる。

サンデンは、プロパンガス(GWP3)を冷媒に使用した熱交換技術を統合熱マネジメントシステム「3・0」に採用した。プロパンは大気に放出しても温暖化への影響が少ないメリットがある。一方で発火リスクがあるため、同社は冷媒ユニット内だけでプロパンを使用し、車室内には水管だけを引き込む構造として安全性に配慮した。今後、EV向けに自動車メーカーへ提案し、26年頃の量産を目指す。

カーボンニュートラルや環境規制の対応で後れを取れば、中長期的には自動車メーカーからの受注減少や投融資する金融機関の評価にもマイナス影響が出かねない。近年では企業のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みなどに注目する消費者も多く、採用活動や企業ブランド力にも響く。

一方で、環境性能は高いものの、コスト増加による価格の上昇で思うように受注先が広がらないなど、現実的な課題もある。部品メーカーによる業界の垣根を超えたコスト削減努力に加え、国などにもライフサイクルアセスメント(LCA)評価の統一基準や循環型経済への後押しなどが求められそうだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月4日掲載