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2023年10月26日

素材メーカー各社 脱炭素の取り組み強化、課題はコスト

素材メーカーが脱炭素の取り組みを本格化している。神戸製鋼所は、天然ガスを還元材の一部に使用する手法によって、高炉工程で二酸化炭素(CO2)排出量を25%減らす技術を確立した。今後、自動車向け鋼板などでの採用を目指す。レゾナックは、川崎重工業と提携して川崎地区で水素発電事業に参入する。素材メーカーが製造工程の低炭素化を進めるのは、自動車メーカーなどがサプライチェーン(供給網)全体での脱炭素化を求めているからだ。今後の課題は製品価格に上乗せされるコストで、調達側の対応が注目される。

神戸製鋼は、自動車向けなどの高級鋼を製造する高炉での低炭素化を進めるため、天然ガスを還元材として使用し、石炭であるコークスを減らす直接還元製鉄法「ミドレックス」技術を実用化している。

これまでのCO2排出削減効果は20%ほどだったが、人工知能(AI)を活用した操炉技術や、独自のペレット改質技術、衝風(しょうふう)の温度や湿度、量を最適化する制御技術などによって、CO2排出削減効果を25%に高める技術を確立した。

加古川製鉄所の大型高炉でミドレックスプロセスの還元鉄を多量に入れてコークスの量を減らし、CO2排出量を減らしつつ安定的に鋼板の材料を製造できることを確認したという。実用レベルの技術を使ったCO2低減製鉄手法の中で「実機の大型高炉で安定的、早期に多量のCO2を削減できるソリューション提供が可能になった」としている。

また、レゾナックは川崎重工と提携し、川崎事業所で100㍋㍗超の水素発電事業に参入する。CO2削減量として年間70万㌧相当を見込む。燃焼時にCO2を発生しないクリーンな水素を使用した電力を市場に供給するとともに、レゾナック、川崎重工も工場などで自家消費して脱炭素化を目指す。

同事業所は臨海部にあるため、海上輸送によって海外などから安価な水素を大量調達しやすい。今後、水素発電事業化に向けて、発電システムの仕様や水素の供給方法などを詰める。レゾナックはモビリティや半導体・電子材料などの素材を手がけている。

素材メーカーが脱炭素化に取り組んでいるのは、川下である自動車メーカーなどがサプライチェーン全体での脱炭素化を推進しているためだ。将来的に材料調達の選定基準に製造過程でのCO2排出量を加える可能性もあり、早期に対応している。

今後の課題は、低炭素化に伴うコストで、神戸製鋼のミドレックス技術を採用した鋼板の価格は「2~3倍高くなる」(同社)という。2022年5月からマスバランス方式で販売している低CO2高炉鋼材「コべナブルスチール」は価格が高いこともあり、自動車業界ではトヨタ自動車の競技用車両の一部と、日産自動車の量産車にとどまっており、採用は思うように広がっていない。

水素発電も調達する水素価格がコストを大きく左右する。コスト削減の取り組みはもちろん、低炭素化に伴うコスト上昇分について、調達側の理解が広がるかどうかも、低炭素材料市場の成長を左右しそうだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月26日掲載