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2023年10月19日

ホンダ 二輪車整備の技術競うグローバルコンテスト開催

ホンダテクニカルカレッジ関東(勝田啓輔校長、埼玉県ふじみ野市)に、世界13カ国から23人の二輪車の整備士が集まった。目的は「ホンダグローバルモーターサイクルテクニシャンコンテスト」。世界に約9万人いるホンダの整備士の中から、最も優れた整備士を決める同社初の世界大会だ。海外から駆け付けた応援部隊も2日間の競技を見守る中、「ファンクラス」は台湾のウ・チュン・イー選手、「コミュータークラス」はインドネシアのマス・ムゥディン選手が優勝した。

コンテストは、実車競技と筆記試験の合計得点で優秀選手を選考した。実車はコミュータークラスが「スーパーカブ110」、ファンクラスが「CBR650R」が題材となり、エンジンの始動不良の原因を探り、エンジンを始動させる作業の正確性や安全性を競った。加えて、ボアシリンダーの計測やブレーキカムの清掃など部品単体の課題も出題した。

ホンダが今回、世界大会を開催したのは、国内外を問わず慢性化している二輪車の整備士不足が背景にある。四輪車と汎用機器のパワープロダクツを含めたホンダ製品の販売台数の約6割が、二輪車となっている。事業利益も全体の半分以上を二輪車で稼ぐ(22年度実績)など、重要な事業となっている。二輪・パワープロダクツ事業本部長の安部典明執行役専務は「当社の顧客の60%を、世界の二輪車のテクニシャン(整備士)が支えている」と話す。

しかし、国内では四輪車と同様に、二輪車の整備士が不足して久しい。高橋孝治二輪事業統括部サービス部長は「(二輪車の)『ドリーム店』のテクニシャンの給料を、少しでも早く(四輪車の)『カーズ店』と同等に引き上げたい」と待遇改善を進める考えを明かす。しかし、四輪車と比べ、1台当たりの整備収益を稼ぎにくい二輪車で、同等の対価を支払うのは販売会社にとっても容易ではない。そもそも、整備需要の縮小にもつながる電気自動車(EV)化の流れで、将来性が見えやすいIT系などに学生の志望先が向いている課題もある。

新興国のホンダディーラーも、同様に整備士確保に頭を悩ませている。ベトナムなど一部地域を除き、新興国での二輪車の整備士の地位は低い。台湾では二輪車の整備士の職業が、日本でいう「3K(きつい・汚い・危険)」のように、「黒い手」と揶揄(やゆ)されているという。半導体メーカーなどが、東南アジアへの投資を拡大する中、二輪車の整備士のような専門知識を必要とせずに同じ給与を得られる生産現場に人材が流れていく傾向もある。一方、二輪車の需要は依然として拡大しており、整備士の確保が追い付かないジレンマを抱えている。

高橋サービス部長は「モチベーションアップと職場環境の改善につなげたい」と、今回の世界大会開催の狙いを説明する。今後は4年に一度、世界大会を開催する方針。グローバル規模で目標を用意することにより、整備士自身のやりがいを醸成する。合わせて、国内外の販売会社のオーナーに、二輪車の整備士の待遇や労働環境を改善してもらうきっかけづくりにも役立てていく考えだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月18日掲載