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2023年10月03日

「第3回CSP大賞」多くの取り組みに感謝をこめて 3事例の受賞後の進捗紹介

日本自動車会議所(内山田竹志会長)は、表彰制度「クルマ・社会・パートナーシップ(CSP)大賞」を2021年に創設して以来、自動車業界関係者や自動車ユーザーを対象に、日頃の地道な取り組みや業界への貢献活動を一般公募で募り、多くの事例を感謝の意を込めて表彰してきた。今年度も第3回目の表彰に向けすでに一般公募を開始し、23年11月20日まで応募を受け付ける。受賞者からは、受賞を契機に取り組みの認知度が高まり活動しやすくなったとする声も聞かれる。これまでの表彰で受賞した3事例の取り組みの受賞後の進捗(しんちょく)を追った。

〈第2回CSP大賞2022 選考委員特別賞〉豊田合成

豊田合成は、第2回CSP大賞2022の選考委員特別賞を受賞した。1996年以降、社内有志のボランティアサークル「車イスドクターズ」が同社近隣の老人ホームや各地域の社会福祉協議会などを毎月訪問し、年間で500台以上の車イスを修理し続けてきた活動が評価された。

社会貢献活動が活発な同社において、車イスドクターズは社内で最も歴史が長いボランティアサークルで、生産現場領域から技術系まで幅広い部門から個性豊かな26人の社員が在籍する。

主な修理内容は、ブレーキやフットペダルの調整、パンク修理だが、さすがに「ものづくり企業」の底力で、結局何でも直してしまうという。修理にとどまらず、納車時に利用者に応じて空気圧を調整したり、きれいに磨いて返却するなど、サークルメンバーの心意気が光る。

2004年以降このサークルの事務局を務めている総務部社会貢献推進センターの山田史子さんは「サークル部員数の低迷や修理先に部品を用意してもらう難しさ、訪問先の施設にいかに信頼してもらうかなど大変だったが、部員の人柄の良さに助けられた」と当時を振り返る。

限られた時間内で修理台数を増やすには作業効率の向上が必須となる。山田さんは自ら「車イスカルテ」を考案し、修理の前段階で施設側が求める修理箇所を明確にすることで迅速な修理対応を可能にした。

受賞を契機に、メディアで紹介される機会が増えたほか、通常のサークル活動では対応していない一般個人の車イスユーザーからも修理を依頼されるなど反響があった。また、社内で活動の認知度が高まったことで、新入社員など新たな参加者が増えたという。「実際にやってみたら面白い」との感想は、サークルメンバーを勇気づけた。受賞により、この活動の位置づけが社内報案件から広報部案件に「格上げ」されたとか。

サークルメンバーの高齢化が進む中、若手社員への積極的な勧誘や、活動をけん引するリーダー、サブリーダー制を新たに設けることで、組織的かつ継続的な活動が可能な環境を整えてきた。

今後の活動目標について山田さんは「現在は本社近隣での活動にとどまっているが、全国に展開する当社の各工場ごとにサークルを立ち上げることで訪問先施設数を増やしていきたい」と意気込む。

〈第1回CSP大賞2021 自動車ユーザー連携賞〉日本カーシェアリング協会

日本カーシェアリング協会(吉澤武彦代表理事、宮城県石巻市)は、第1回CSP大賞2021の自動車ユーザー連携賞を受賞した。同協会は、2011年に発生した東日本大震災の被災者向けに、車両貸与を通じて「足の確保」を中心とする生活支援を行うことを目的に発足した。その後、高齢者などの移動支援にとどまらず、災害で他地域への転居を余儀なくされた住民へのサポートや近隣同士の支え合いを構築するきっかけを創出するなど活動の幅を広げてきた。

一方で、近年多発する台風、豪雨、地震による大規模災害の被災者支援でも全国各地に出向き、被災者などの移動手段を確保する車両を無償で貸し出す活動も開始した。CSP大賞では、これらの長年にわたる継続的かつ発展的な活動が評価された。

吉澤代表理事は「従来は震災復興関連や地域関連の活動が多かったが、受賞を契機に自動車関連業界に認知されるようになった。当協会の活動のために連携したいのは自動車業界であり、自動車メーカーや販売店、カー用品メーカーや陸送業界など、すでにいろいろと協力を頂いている。今後は、より一層業界全体の皆さんと一緒に考えながら活動していく必要があるだろう。ちょうど活動の幅を地元の宮城県から全国に拡大していく時期だったので、受賞により他地域での活動説明を行いやすくなった」と受賞の影響を振り返る。

同協会の事業資金は、助成金関連と寄付金が約6割を占め、NPOへの車両貸し出しなどの有償事業は4割に止まる。支援活動の継続には事業採算性の安定的な確立が必須だ。被災者支援に止まらず、自治体と連携して社会福祉領域への車両の貸し出し拡大を模索するなど、協会活動の安定的な維持を可能にする方策を探る。

今後の抱負について吉澤代表理事は「石巻では協会活動を事業化できたので、他地域での活動展開も可能だろう。現在の被災者支援活動は対症療法の領域にとどまっているが、災害が増え続ける現状では、東日本大震災規模の災害に対応可能な仕組みを構築したい」と力を込める。

「車を寄付する」という選択肢を生み出した同協会は、車両の貸し出しを切り口とした被災者支援としてのセーフティーネットのさらなる強化を目指す一方で、台風到来時などに車両の被災を防ぐ「車の避難ルール」の啓発活動にも注力していく方針だ。

〈第1回CSP大賞2021 特別賞〉第一交通産業グループ

第一交通産業グループは、「地域での公共交通機関による社会貢献として、外出時の乗合タクシー・ママサポート・子どもサポート・お墓参りサポートなどの『おでかけサポート事業』の取り組み」で、第1回CSP大賞2021の特別賞を受賞した。社会構造の変化などを背景とした交通の不便地帯の増加やドライバー不足などの課題を解決し、地域社会を活性化し、率先して守る立場でありたいとの強い思いから1999年に取り組みをスタートさせた。

過疎化する地方部の交通網維持、活性化などを目的にスタートした乗り合いタクシー事業だったが、「中心部でも交通不便地域があることが分かった」と交通事業統括本部資材課・ネットワーク推進課の古賀隆太次長は話す。そのため「協創の思いの下、柔軟な対応で、鉄道やバス、乗り合いタクシーなど、いろいろなパターンで地域を守る意識が欠かせない」(同)と強調する。同時に、地域の移動を守るためには「自治体との連携など、まちづくりとセットで考えることが重要」と指摘する。

また、妊娠中や3歳までの子どもを育てる女性が利用できるママサポートタクシーは、年に5万人ずつ登録者が増加。累計登録者数は現在47万人まで増えた。同サービスの利用者が、その後ドライバーとして勤務することを希望したという思わぬ副次的効果もあった。同社では、女性ドライバーだけで毎月10人ずつ増加。ドライバーの女性比率は業界全体が4%に対して、同社は11%にのぼる。

女性ドライバー比率が高まる中で取り組んだのが更衣室や化粧室などハード面の整備と固定給制度や柔軟な勤務体系の採用などのソフト面の対応だ。「女性ドライバーや求職者、利用者などの声を聞き、女性が働きやすい環境づくりにこだわり、事例を横展開している」と交通事業部営業推進課の佐々木綾子主任は述べる。

コロナ禍にスタートしたお墓参りサポートタクシーは、リピート率約50%を誇るサービスの一つ。佐々木主任は「高齢者などを中心に非常に感謝していただけるサービス」ととらえ、顧客ニーズに合わせた展開も模索する。

CSP大賞特別賞を受賞後、約1万人のドライバーにも配布する情報冊子や告知CMなどで受賞をアピールした。「ドライバーから『自分たちが取り組んできたことが評価され、表彰されるということがモチベーションにつながった』という意見や『仕事に誇りを持てる』という声があがった」(佐々木主任)という。佐々木主任は「タクシーの付加価値として取り組んできたことが評価され、乗務員のサービス品質の底上げ、自信、自覚にもつながった」と話し、「大切なサービスとしてしっかりと、丁寧に浸透させていきたい」と考えている。

 

カテゴリー キャンペーン・表彰・記念日,社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月2日掲載