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2023年9月15日

1~7月の都道府県別EV販売 軽EV登場を追い風に大都市圏以外でも普及

2023年1~7月までの都道府県別の電気自動車(EV)の販売台数を集計したところ、佐賀や大分、山梨など大都市圏以外の都道府県が上位に浮上しつつあることが分かった。日産自動車と三菱自動車が投入した軽EVが、燃料高や補助金も追い風に販売を伸ばしている。積極的にEVを売り込む販社の有無も比率を左右しているようだ。もともとEVは「複数保有で1日当たりの走行距離が短い地方に向く」との見方が以前からあった。SUVなど高額車が中心の欧米とは異なり、地に足の着いた普及の構図が実体化しつつある。

業界団体などの統計をもとに都道府県(北海道は7地区)別の乗用車のEV販売台数(含軽)と販売比率を算出した。全国平均の2・3%に対して、最も比率が高いのは東京で4・5%だった。富裕層が多く、登録車、軽ともにEV比率は東京がトップだが、登録車の3・3%に対し、軽に限ると販売比率は10・4%と1割を超えた。

都内で100店舗以上を展開する日産東京販売ホールディングスでは1~7月に累計1365台のサクラを販売した。同期間における「デイズ」「ルークス」の販売台数は2254台で、軽販売のうち約35%がサクラだ。

国の補助金に加え、最大85万円が支給される都独自の補助金効果が大きいが、同社の担当者は「バリューが評価されている。高品質で安く乗れることが要因だ」と話す。ガソリン車では軽比率が低い東京だが「軽自動車に対する意識が一般化している」(同)という。

登録車と軽を合算したEV比率ランキングでは、東京のほか、京都府(4位)、神奈川県(8位)、福岡県(10位)、大阪府(16位)、愛知県(18位)と都市圏の比率が平均値よりも高かった。ただ、2位に佐賀県、3位に大分県がランクインした。いずれも僅差の争いだが、普及の構図が従来とは異なる。佐賀は充電インフラの整備を他地域より積極的に進めてきたことがEVの普及を後押ししたとみられる。

地域に根差す販売会社の営業力も無視できない要素だ。例えば、滋賀の軽EV比率は5・1%で、軽のランキングでは東京、神奈川に続く3位にランクインした。県内日産販社の1社である滋賀日産(小谷博司社長)は動画共有サイト「ユーチューブ」も活用し、サクラなどの情報発信に力を入れている。ユーチューブの活用では福島日産(金子與志幸社長)も積極的で、福島は降雪地にも関わらず、登録車を含めたEV比率が2・5%で11位に入った。

車両製造拠点のある都道府県もEV比率が高い。サクラや三菱自「eKクロスEV」を生産する水島製作所がある岡山は、登録車と軽の合計で7位、軽だけで6位だ。メーカーや取引先など関係者の需要に加え、自治体が予算措置を講じて充電インフラや事業用EVに補助金を出していることも一因だ。

一方、EV比率が最も低かったのは函館の0・4%だった。帯広を除く北海道の残り5地区や青森はいずれも1%未満。秋田や岩手、新潟なども普及率は低い。車載電池の性能は改善しているものの、依然として寒冷地では航続距離への不安からEVの購入を手控えるユーザーが多いことがうかがえる。ガソリン車などを含めた札幌地区の新車販売は全国の2・3%を占めるが、EVに限った割合は0・6%にとどまった。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月14日掲載