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2023年9月13日

福井県永平寺町 日本初の自動運転「レベル4」サービス開始

福井県永平寺町(河合永充町長)は、日本初の自動運転「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)移動サービスを始めた。運行区間は約2㌔㍍だが、同町は安全を確保しながら運行区間を伸ばし、地域活性化につなげたい考え。政府は、2025年度をめどに50カ所程度、27年度までに100カ所以上で同じような移動サービスを計画する。リアルワールドでの運行が広がることで、センサーやソフトウエア、車両誘導部品などを手がけるメーカーの商機も広がる。

永平寺町では、第三セクター「まちづくり株式会社ZENコネクト」が同町から委託されて運行を担い、町道である「永平寺参ろーど」内の約2㌔㍍を自動運転車両が走る。河合町長は「発展形を模索している」と語り、永平寺門前の観光エリアなど運行区間の拡大も視野にサービスの拡充を目指す。

「永平寺参ろーど」は、京福電気鉄道永平寺線の廃線跡を遊歩道として整備したものだ。道路上に敷設した電磁誘導線に沿って、ヤマハ発動機製の電動カートをベースとした車両が時速12㌔㍍で走る。車両にはカメラやミリ波レーダーを備え、自動運行装置「ZENドライブパイロットレベル4」が発進・停止や緊急時の自動停止などをこなす。停留所近くの遠隔監視室には、車両が自動停止した際の復帰対応や、緊急時に現場へ駆けつける2人のスタッフが常駐する。

高齢化や過疎化が進む日本では、移動困難者の増加が見込まれ、解決手段のひとつとして自動運転サービスに期待が寄せられる。

導入地域が増えることで、現在は「オーダーメイド」(同町)という車両の製造コストの低減効果も期待できる。車両や部品メーカー側も、顧客ニーズを含めたリアルワールドでの改良に生かせ、自動運転車両の性能を高められそうだ。

ただ、一般車や歩行者、自転車が混在し、交差点もある一般道でのレベル4サービスの普及には技術的な課題も多い。同町でも「生活移動を自動運転で全部カバーするのは、技術的にまだ難しい」として、永平寺周辺での観光利用などから自動運転サービスを広げていく考えだ。同町としては、新型コロナウイルスの5類移行に伴う人流の変化や、来春に控える北陸新幹線の福井延伸も追い風に、レベル4サービスを地域活性化につなげていく。

河合町長は自動運転サービスの進化について「(レベル4の)トップランナーとして、政府や産業技術総合研究所、メーカー各社といろいろな実証をやらせていただいてきた責務がある。しっかり協力していきたい」と語った。

わずか2㌔㍍とは言え、ことのほか安全や品質を重視する日本で商業運行にこぎ着けた意義は大きい。技術の進化や運行ノウハウの蓄積とともに、さまざまなレベル4移動サービスの普及が期待されそうだ。

 

【レベル4(特定条件下における完全自動運転)】

改正道路交通法(今年4月施行)では「特定自動運行」と定義される。運行主体が「特定自動運行計画」を都道府県の公安委員会に提出して許可を得たうえで実施する。「特定自動運行を行う車両に装備した装置から送信された周囲全方向の道路と、交通状況と車内状況の鮮明な映像と明瞭な音声、車両の位置情報を常時かつ即時に受信する」ことが条件の遠隔監視装置を備え、特定自動運行主任者が運行を監視する。

また、車両が自動運行中であることを周囲の車両や歩行者に知らせるため、車両の前方または後方の見やすい位置に「自動運行中」の文字を自動運行装置の作動状態と連動して見やすく表示する装置を取り付ける必要もある。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月2日掲載