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2023年9月12日

ITSジャパン23年版リポート 地域交通は「街づくり」視点で

ITSジャパン(山本圭司会長)は、2023年版年次リポート「日本のITS」をまとめた。海外を含むITS(高度道路交通システム)の技術や普及動向について、政府や地域、産業界、学会などの視点で整理・体系化して紹介している。特集では、ITSジャパンが力を入れる「地域ITS」についての取り組みを詳述し、活動の成果から①移動手段は街づくりのインフラとして位置づけるべき②住民も移動手段の確保を「自分ごと」として捉えるべき③組織間の壁を越える「熱意ある人材」や組織が必須―などと提言した。

近年は先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術が注目されるが、「人と道路と自動車の間で情報をやりとりし、事故や渋滞、環境対策など、さまざまな課題を解決するためのシステム」と定義されるITSは、これらの先進技術を含む概念だ。

特集では「地域ITS活動」を取り上げた。ITSジャパンは、これまでも活動計画のなかに地域視点を盛り込んできたが、第4期中期計画(21~25年度)の策定にあたり、社会課題の解決などに加え「個人視点で創出すべき価値」に着目、政府が地方創生を打ち出していたこともあり、地域ITS活動に本腰を入れ始めた経緯がある。

まず、「地域ITSのありたい姿」として、「環境」、観光客を含めた「まちづくり」、「住民・福祉」、「防災・減災」の4要素を考え、各要素をかけ合わせつつ、魅力のある街や地域経済の活性化につながることをゴールとした。その上で、政府「社会還元プロジェクト」に選ばれた実証モデル4都市(青森市、横浜市、豊田市、柏市)を支援するとともに、ITSジャパンでも連絡会や「ITS地域交流会」を設け、情報共有や議論を後押ししてきた。

年次リポートでは、こうした活動で得た考察として、「地域社会が直面する少子高齢化や災害の激甚化、デジタル技術の進展などといった変化に追随していくためには、これまでのように国・都道府県・市町村といった行政中心では限界がある」と指摘。産官学や地域住民など、組織横断の調整機能や「共創」が重要になるとし、冒頭の①~③を提言した。

具体的には①移動はあくまで手段であり、地域をどうしたいのかといったビジョンが重要。また、地域ぐるみで交通体系と利用促進策、費用負担をセットで考える必要がある②多くの地方では公共交通の分担率が数%に過ぎないが、今後は免許返納時に必要な移動手段を「自分ごと」として住民が意識すべき③成功事例では、自治体や交通事業者、担い手などに移動手段の確保に向けて熱意ある人材がいた。

共創を実現するうえでは、自治体内(都市や交通、福祉政策、エネルギー政策)を横断して政策を立案、遂行する組織や人材とともに、地域課題を可視化したり、移動データを利活用するデータ基盤やデータアナリスト的な人材、組織が必要だ―などと指摘した。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物,社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月12日掲載