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2023年9月04日

自動車リサイクル業界に広がるSNS活用の動き 車両確保や人材採用

自動車リサイクル業界で、一般ユーザーからの車両仕入れや人材採用などにSNS(会員制交流サイト)を活用する動きが広がっている。使用済み自動車の発生台数が低迷し、中古車オークション(AA)では外国人事業者との価格競争が激しくなっている。仕入れ環境が厳しさを増す中、一般ユーザーから車両を買い取ることの重要性が高まっており、各社はSNSを活用して自社の認知度向上に取り組む。

また、リサイクル業界では社員の採用に頭を悩ませている事業者が少なくない。各社は若年層に自社の魅力を伝えるためにも、SNSを通じた情報発信に力を注いでいる。

「使用済み車の処分にお金がかかると認識している人もおり、当社が車を買い取っていることを知ってもらうことが重要だ」と、イワマワークス(静岡県富士市)の岩間優社長は力を込める。背景にあるのは、使用済み車の仕入れ環境の悪化に対する強い危機感だ。同社の1日当たりの平均入庫台数は1年前に比べて2割程度減少している。

状況はすぐに好転しないと見ており、AAだけではなく、一般ユーザーからの仕入れにも力を入れる。同社の買い取りサイトには、すでに一般ユーザーから月間平均15台程度の申し込みがあり、成約率はほぼ100%。サイトを経由しないケースも含めると、入庫台数は同約50台に上っているという。

同社は2023年の春から夏にかけて、一般ユーザーを対象にアンケートを実施。同社を知ったきっかけを尋ねたところ、知人などからの口コミとの回答がほとんどを占めた。この結果も踏まえ、一般の顧客に対して「サービスの感想をどんどんSNSに投稿してほしい」(岩間社長)との呼び掛けを始めた。同社のSNSには自社のホームページのリンクを貼り付けている。さらに、アクセスした一般ユーザーが同社への関心をさらに高められるように、部品販売サイトの品ぞろえも拡充していく考えだ。

SNSの活用は採用分野にも広がっている。CRS埼玉(加藤一臣社長、埼玉県川越市)は人材の長期育成の観点から新卒採用を強化しており、若年層との接点づくりのためにSNSを活用している。会員制交流サイト「フェイスブック」には、入社1年目の社員が研修を通じて業務に習熟していく様子を積極的に投稿。就職活動中の学生が、入社後の自分の姿をイメージできるようにしている。

現在は採用者に占める新卒者の比率が半数程度に達し、大学卒、専門学校卒、高校卒と、異なる年齢の学生や生徒の採用に成功している。アールレックス(埼玉県川越市)の石川将輝代表も、「SNSで会社の情報を積極的に発信すると、若い人は関心を持って反応してくれる」と、採用に与える効果の大きさを指摘する。

SNSを通じた情報発信には対外的な効果に加え、在籍している社員にも好影響がある。CRS埼玉の加藤社長は社員が自社のSNSを見ることで「自社に対する理解が深まる」とし、社員教育のツールにもなると強調する。縦割りの傾向が強い組織の場合、社員が自らの所属と異なる部署の様子を知る機会が少なくなるケースも起こり得る。部署や社員の間で相互理解を深める上で、SNSが重要なきっかけになる可能性がある。

使用済み車の仕入れ環境の厳しさはさらに長期化する可能性があり、少子高齢化の加速で採用はますます難しくなることが予想される。SNSの活用の成否が各社の将来を左右するかもしれない。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 中高生,大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞9月1日掲載