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2023年8月25日

頻発する災害にカー用品で備え 増える水害には脱出用ハンマー

大型の台風をはじめ、大規模な自然災害が全国各地で頻発している。地震や浸水などにより道路が寸断される事例も目立つほか、影響が長引くケースもある。一時的に車内で過ごさざるを得ないことも想定されるため、自衛手段として災害対策にも活用できるカー用品が注目を浴びている。

ジャンプスターター機能を備えたモバイルバッテリーがその一例で、「日常使いも可能な商品が堅調」(オートバックスセブン)という。台風シーズンは今後本格化するほか、冬場には大雪に警戒する必要がある。カー用品店の店頭でもこれから、需要が高まるアイテムの一つとなりそうだ。

バッテリーが上がった車両のエンジンを再始動できるジャンプスターターは、小型軽量化が進み一般的なモバイルバッテリーと同等の大きさになっているものも少なくない。出先での不意なバッテリートラブルに備えて、用意しておくドライバーが増えているが、最近では防災アイテムとしても人気が出ている。その理由はモバイルバッテリーとして、普段使いができる点だ。

通行止めに巻き込まれたり、自宅が被災したりした場合、車の中で過ごす時間が長くなる。給油しにくい状況であれば、エンジンをかけることも気を遣う。こうした環境でもモバイルバッテリーがあれば、情報を収集したり、外部と連絡したりできるスマートフォンを充電することが可能だ。ちょっとした電子機器や照明器具も稼働できる。

例えば、ベロフジャパン(宇井新代表、東京都府中市)の製品は、本体に被災時にも役立つ高輝度LEDライトも備えている。電池の容量も排気量3㍑までの車両の再始動に対応した6千㍉アンペア時になっており、災害対策としても十分に対処できる性能を持たせている。こうした〝使い勝手の良さ〟が販売拡大のポイントになりそうだ。

そのほか、渋滞時の備えにもなる携帯式トイレも、災害などの非常時にも役立つ。災害対策用品などを手掛けるケンユー(占部克明社長、広島県福山市)は、省スペースでの使用や後処理を容易にした製品を販売している。セイワ(田邉貴幸社長、東京都江戸川区)は、消臭成分を配合した製品を取り扱っている。独自の工夫を施すことにより、空間が限られる車内に配慮した機能性を持たせ、災害発生時にも対応している。

万が一、災害に巻き込まれた場合の脱出用のアイテムも需要が高まっている。オートバックスセブンが手掛ける「AQ.緊急脱出用ハンマー」は軽い力で窓ガラスを破壊できるようにし、女性にも扱いやすい仕様とした。シートベルトを切断するカッターも取り付けている。ここ最近は水害の発生が多く、道路の冠水で車両が浸水して不動となり、車内に閉じ込められる被害も出ている。こうした事態に遭遇しても、これ一つで脱出できるハンマー類のニーズも根強いとみられる。

また、アイリスオーヤマ(大山晃弘社長、仙台市青葉区)は、避難時を想定して小型化した「防災リュックセット1人用」を販売している。タオルや懐中電灯など、避難初日を安全に過ごせる33点のアイテムで構成。ホームセンターのほか、カー用品店で取り扱っているところも出ており、備えとして車内に積んでおくドライバーもいるようだ。

コロナ禍が落ち着いたことで、盆休みも各地の高速道路や幹線道路では渋滞がみられた。ジャンプスターターや携帯式トイレなどは、こうした移動需要の増加も需要に寄与したと考えられる。しかし、日本で災害が増えているのも事実。各製品の防災や減災につながる機能を訴求していけば、さらなる販売増につながる可能性もある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月24日掲載