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2023年8月01日

輸入車ディーラー カーシェアでEV気軽に体験、顧客との接点機会

カーシェアリングサービスで輸入車や電気自動車(EV)を体験できる環境が増えている。輸入車勢は国産車と比べて店舗数が少なく、ショールームの敷居が高いと思われがち。販売店で気軽に利用できるカーシェアは通常の試乗との補完効果が期待できる。発売直後の車種を利用できることも人気の理由だ。顧客との接点づくりに役立てる動きもあり、今後も注目を浴びそうだ。

輸入車ディーラー各社のカーシェアを支えるのが、DeNA SOMPOモビリティ(DSM、馬場光社長、東京都渋谷区)のカーシェアサービス「エニカ」だ。7月上旬時点で、エニカの「ディーラーカーシェア」では国産車、輸入車含めて119社の新車ディーラーがエニカを運営しており、そのうち101社が輸入車ディーラーだ。ブランド数は20銘柄に上り、国内の主要な輸入ブランドをほぼ網羅する。

ディーラーカーシェアは、エニカの会員であるディーラーが、同じく会員である個人に車両を受け渡す仕組み。両者が車の取得・維持に必要な実費などを負担する「共同使用契約」に位置付けられる。馬場社長は「ドライバーに将来的な車の購入を検討してもらうために使ってもらうもの」と説明する。

また、EVの投入では輸入車ブランドが国産車ブランドに先行している。輸入車ブランドの割合が高いディーラーカーシェアでは、EVのラインアップは10モデルを超え、台数も100台弱をそろえる。EVのカーシェアは2年前までは利用の予約が入らない状況だったが、風向きが変わった。「試し乗りが増えている。購入を射程に入れているので、充電方法や航続距離を気にするドライバーもいる」(馬場社長)という。

ディーラーカーシェアを各拠点で利用できる環境を構築したのが、中国・比亜迪(BYD)傘下のBYDオートジャパン(東福寺厚樹社長、横浜市神奈川区)だ。2023年5月に18拠点が同サービスの運営を開始した。

営業企画部の花岡哲部長は「日本でのBYDの認知向上が目的」と話す。23年1月にEV「アット3」を発売したばかりのBYDは国内でのブランド認知が行き渡っていないのが実情。エニカを活用することで認知向上を狙う。5月中旬の開始後から約2カ月間でアット3の利用回数は100回を超えた。「滑り出しは順調」(花岡部長)と手応えをつかんでいる。

EVへの固定観念や苦手意識を払しょくすることも目的の1つで、花岡部長は「乗車前の説明を通じてEVがどんなものか伝えられている。ドライバーとのつながりもつくれている」と話す。

ボルボ・カー・ジャパン(VCJ、マーティン・パーソン社長、東京都港区)もエニカの活用を進めているインポーターの1社。公式サービス「エニカオフィシャルシェアカー」にボルボのEV2車種が4月に首都圏に配備され、現在は15台が利用可能だ。

VCJによると、5月の1台当たりの平均利用回数は32回で、平均利用時間は8時間30分だった。長期休暇などの要因を考慮する必要はあるが、「ほぼ毎日利用されている状況」(担当者)という。また、利用者の7割超が20~30歳代のため、若年層との接点づくりにも役立っている。VCJは「今後、配備台数の拡大を検討したい」と意欲を示す。

カーシェア事業者に頼らず、独自のサービスを構築する動きもある。ヒョンデモビリティジャパン(趙源祥社長、横浜市西区)は6月、商業施設「代官山Tサイト」(東京都渋谷区)にヒョンデのカーシェアサービス「モーシャン」を設置した。同社と韓国ヒョンデ、同店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、髙橋誉則社長、東京都渋谷区)による協業の一環で、消費者との接点拡大を狙う。

カーシェア業界も輸入車に期待する。「カレコ・カーシェアリングクラブ」を運営する三井不動産リアルティ(遠藤靖社長、東京都千代田区)は23年4月、フォルクスワーゲン「Tクロス」をラインアップに加えた。利用状況は順調で、「1時間の短期利用もある」(カーシェアリング事業部)と消費者と輸入車の接点の1つになっている。同社の会員数は23年3月時点で40万人を超えた。「カーシェアの利用は順調に伸びている」(同)と話す。

カーシェアの車両数、会員数は年々増加している。カーシェアは「所有」から「利用」の流れを加速するため、新車ディーラーを中心に警戒感が根強い。一方、国内でサービスが普及するにつれて活用方法の多様化が進み、各事例のような「共存共栄」の形も出てきた。カーシェア事業者とディーラーが今後どのような関係を築くかに関心が集まっている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月31日掲載