2023年7月26日
「2024年問題」で自動車メーカーも対策 知見生かして物流効率化
政府や物流業界に加え、自動車メーカー各社が、物流の「2024年問題」への対応に乗り出す。日野自動車の物流子会社は、量子コンピューターを活用して積載率を高める。トヨタ自動車は、ドライバーの収入減を補うために輸送単価を改定する。自動車メーカーのノウハウも生かし、物流の効率化やドライバーの待遇改善を進めて輸送力の確保につなげる。
政府は、2024年問題で何も対策をしなかった場合、24年度の輸送能力が19年度比で14%不足すると試算する。日野自をはじめ、荷主や物流事業者が出資するネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、梅村幸生社長、東京都新宿区)は、同社のシステム「NeLoss(ネロス)」の機能を拡張する形で、23年度内にも稼働中の車両の積載状況を踏まえ、荷物の最適な積みつけ方法を量子コンピューターで瞬時に計算できるようにする。これにより、現在は約6割程度の平均積載率を8割以上に高める考えだ。
ネロスは、荷受け後に人がパズルを組むように行っていた積みつけと配車の最適解を自動化するシステムだ。これまで2時間かけていた作業を40秒に短縮できる。22年度から運用を開始した。23年度に稼働中の荷物の積載状況を考慮して積みつけを最適化できるように改良し、24年度には運行ルートや運行ダイヤも最適化できるようにする。API(アプリケーション間をつなぐインターフェース)も開発し、同社に参画する物流事業者以外にも利用できるようにする。
残業規制により、ドライバーの年収が目減りする懸念もある。トヨタは、こうした懸念を踏まえ、物流会社に支払う輸送単価を上げる。完成車輸送分は22年下期から改定済みで、23年下期からは部品輸送分にも適用する。トヨタの担当者は「仕入れ先とも議論し、個社、個人、個別で丁寧に対応する」と語った。
物流そのものの効率化も急ぐ。部品では、仕入れ先が手配する「お届け物流」からトヨタによる「引き取り物流」へと順次切り替え、複数の部品を1台のトラックが集配してまわる「ミルクラン」方式などで効率を高める。引き取り物流は九州と東北地方で導入済み。お膝元である東海地方でも4割程度が導入する。この比率を引き上げていく。
NLJも、世界で唯一となる全高4・1㍍、全長25㍍の「ダブル連結トラック」を用いた混載輸送や、豊田自動織機の自動運転フォークリフトを活用した荷役の自動化などで効率化を進める。梅村社長は「業務効率化で当社のドライバーの年収を600万~800万円に引き上げる」と語った。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞7月26日掲載