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2023年7月14日

ヤマハ発動機とJAF 「グリーンスローモビリティ」で地域課題解決

ヤマハ発動機と日本自動車連盟(JAF)が地域が抱える課題解決に低速モビリティを活用する取り組みを本格化している。ヤマハ発の電動ゴルフカートをベースとした低速モビリティと、JAFがロードサービスを中心に全国展開しているサービスネットワークを組み合わせることで、公共交通機関が減っている過疎地での移動手段の提供や観光振興など、社会の課題解決につながるサービスの創出を模索している。

国土交通省は、地域が抱える交通に関する課題解決と地域での低炭素モビリティの普及を実現するため、時速20㌔㍍未満で公道を走行できる電動車である「グリーンスローモビリティ」を推進している。ヤマハ発とJAFは、この政策に対応して昨年6月から低速モビリティ分野で協業してきた。

6月下旬に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された自治体関係者向けの展示会「自治体・公共ウィーク2023」で協業の成果を示した。ブースではヤマハ発が手がけてきたグリーンスローモビリティの活用事例や、グリーンスローモビリティを自治体が導入するに当たってのJAFの支援内容を紹介、自治体関係者らにグリーンスローモビリティ導入を促した。

両者の協業でそれぞれの役割は、ヤマハ発が実証実験に適した仕様に仕上げたグリーンスローモビリティの貸し出しや販売で、JAFがグリーンスローモビリティを運行するルート設定の支援や、需要予測など、関係者と連携しながら導入に向けた準備を支援する。

自治体などが運行するグリーンスローモビリティのドライバーは、普通自動車免許に加えて、安全運転講習の受講が必要となる。講習はJAFの職員が担当しており、グリーンスローモビリティによる輸送サービスを導入しやすい環境を整えている。

今年2月、埼玉県西部の小鹿野町で実施したグリーンスローモビリティの実証実験は、両者が支援した。小鹿野町と同町が100%出資する「地域商社おがの」が運行事業の運営や車両管理を担当し、JAFは実証運行に向けた運営面でのサポートやドライバーの講習などを担当。2月8日から21日まで実証運行し、その後、本格導入に向けた課題を洗い出した。今後、検証結果を踏まえて、効果などを見極めた上で導入を判断するとしている。

JAFの会員部アライアンス・セールスチームに所属し、ヤマハ発との協業事業を担当する大野輝明マネージャーは、「(両者の)協業開始以降、いくつかの自治体から問い合わせをもらっている」としている。グリーンスローモビリティとサービス導入関連業務の支援をセットで受けられる利便性の高さもあって、自治体関係者からの注目度が徐々にではあるが高まりつつあるようだ。

ヤマハ発は、現在の中期経営計画で、モビリティサービス、低速自動走行などの新規事業で2024年に売り上げ300億円の目標を掲げている。中でも高齢化が進み、公共交通機関が減っている過疎地域での交通の確保や、観光資源となるような新たな観光モビリティとなるグリーンスローモビリティ関連事業の成長に期待する。全国に拠点を持ち、こうしたサービス導入をバックアップできるJAFと連携する。

一方のJAFも22~25年の3カ年計画の重点施策で「社会課題の解決につながるモビリティサービスの実現」を掲げる。グリーンスローモビリティメーカーと組むことで、地域のニーズに細かく対応したグリーンスローモビリティを使ったサービス提供を支援していく体制を整える。地域が抱えるさまざまな交通の課題を解決する低速モビリティーサービスに熱い視線が注がれている。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月12日掲載