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2023年7月14日

警察庁 大型トラック最高速度引き上げへ有識者検討会設置

警察庁は、大型トラック(車両総重量8㌧以上、最大積載量5㌧以上)の規制速度を引き上げる検討を始める。26日に有識者検討会を設置し、年内をめどに提言をまとめる。人手不足が深刻なトラックドライバーの労働環境改善などにつなげる狙いだが、重大事故が増えるなどの懸念も根強く、議論は曲折も想定される。

中・大型トラックなどの高速道路における最高速度は、1963年に道路交通法施行令で時速80㌔㍍と定められた。その後、国土交通省は道路運送車両法に基づく保安基準を改正し、2003年9月から「速度抑制装置(スピードリミッター)」の装着を義務づけた。

スピードリミッター義務化の背景には、98年当時、高速道での死亡事故原因の2割強を大型トラックが占めていたことがある。このうち、約半数が追突事故で、85%で法定速度を超過していた。車重の重い大型トラックの衝突は重大事故につながりやすい。このため、国交省は欧州の事例なども参考に検討会で議論を重ね、大型トラックなどにスピードリミッターの装着を義務づけることとした。

スピードリミッターは規制速度に「余裕速度分」を加え、時速90㌔㍍を超えると作動するよう、国交省の通達で決められている。仮に規制速度が引き上げられた場合、同じ理屈ならスピードリミッターの上限速度が引き上げられる可能性もある。既販車分を含め、自動車メーカーや整備事業者も対応を迫られる。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)に基づき、来年4月からはトラックドライバーなどに対する時間外労働の上限規制と改正・改善基準告示が適用される。これらによる輸送力不足が「2024年問題」として懸念され、政府は6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」をまとめた。

この中で、交通事故の発生状況や車両安全対策に関する新技術の普及状況などを踏まえ、高速道路での規制速度を「引き上げる方向で調整する」ことを盛り込んでいる。

ただ、トラックドライバーの労働環境は、理不尽な「荷待ち時間」や、重層的な産業構造による長時間労働、駐車場や待機場の不足などによるところが大きく、規制速度の引き上げがどの程度の改善につながるかは未知数だ。労働組合などからは、安全性の観点などから懸念する声もあがっている。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月14日掲載