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2023年7月12日

損保大手4社 EV向け保険で法人ユーザー開拓、本格普及にらむ

損害保険大手4社は、電気自動車(EV)向けの自動車保険で法人客の開拓に乗り出している。EV向け保険は2023年にかけて商品が出そろっており、すべてが法人向けとなっている。国内市場のEV化は、1日当たりの走行距離や稼働時間を見込みやすい商用車から進むとの見方があるためだ。

ただ、今後の本格的なEV普及をにらみ、市場調査のような位置付けで用意した商品も出ている。契約数については4社とも公表していないが、実際にはまだ少ないとみられる。こうした中でも将来の変化を先取りした保険を投入することで、持続的な成長につなげる狙いだ。

EV向け保険で先行したのは、損害保険ジャパンだ。企業向けに小型商用EVの自動車保険を最大で10%割り引く商品を21年12月に発売した。「3年間限定」の提供で、小型商用EVがどのように使われたかなどのデータを収集する。これを分析し、今度どのようにEV保険を展開していくかを決めるという。

同社に続いたのは、東京海上日動火災保険。EVトラックを販売するメーカーや保有する運送事業者を念頭に置いた商品設計となっている。万が一の「電欠」(駆動用電池の充電がなくなった)時に、荷物を目的地まで運ぶ代替輸送費用や車両の急制動で貨物が損害を受けた場合の補償をする。

MS&ADインシュアランスグループ傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、社用車のEV代替を促すのが特徴だ。内燃機関を積む社用車が大きな事故などを起こし、EVに代替する場合、その新車保険価額に100万円を足した額を上限に保険金を支払う。

適用にはもともと法人として、EVへの買い替え計画を持っているなど一定の条件が必要となる。両社はこの保険の販売目標を、30年までに3万台としている。単純計算では8年間で毎年3800台ずつ増やしていく計画だ。

4社とも最近までの契約実績については非開示としており、MS&ADグループ以外は目標数も公開していない。ある大手損保の幹部は「(実績は)まだまだといったところ」と、実情を明かす。ただ、国内でもEVシフトの動きが今後本格化するのは間違いない。各社は今のうちから準備していくことで、EVに最適な自動車保険のあり方を探っていく考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月11日掲載