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2023年7月06日

全国の整備専門学校 国家一級整備士、養成課程新設相次ぐ

全国各地の整備専門学校で、国家一級自動車整備士の養成課程の新設に乗り出している。すでに一級課程のある学校でも定員の拡大に踏み切ったケースも出ている。車両技術の高度化や電子制御機器の搭載などが進む中、整備現場ではより高いスキルを持つ整備士が求められている。このため、整備士資格の最高峰となる国家一級資格の取得に関心が高まっているとみられ、今後もニーズが高まる可能性がありそうだ。

2023年度は名鉄自動車専門学校(佐藤隆雄校長、愛知県大口町)が「1級自動車整備士コース」を、金沢科学技術大学校(田井友章校長、石川県金沢市)も自動車工学科に「1級コース」を開設した。22年度も越生自動車大学校(市川剛士校長、埼玉県越生町)が「1級自動車整備科」を新設。さらに24年度は富士メカニック専門学校(渡辺英和校長、静岡県小山町)が「1級自動車整備科」の立ち上げを計画するなど、この数年だけでも一級取得を目指せる整備学校が急速に増えていることが分かる。

一級課程の定員を増やす整備学校もある。トヨタ名古屋自動車大学校(永田透校長、愛知県清須市)は24年度から、一級課程に相当する「高度自動車科」の定員を120人から160人に拡大する。このほかの自動車メーカー直営校でも一級課程の入学者が増加傾向にあることから、定員を増員する動きがさらに広がることも考えられる。

日産・自動車大学校の本廣好枝学長は「技術が高度化する中、多くの学生に一級を取得してほしいというのが学校として一番の思いだ」と力を込める。こうした背景から、各校が学生募集活動で一級課程の魅力を強く訴え続けてきたことも人気につながっていそうだ。

また、一級整備士の処遇改善が進んでいることも要因とみられる。トヨタ東京自動車大学校(上田博之校長、東京都八王子市)は、一級取得を目指す学生の意欲向上につなげるため、トヨタ自動車の系列販売会社に対して一級取得者に手当を支給するよう要請してきた。今では、「手当を付けてくれる販社が増えてきた」(上田校長)という。

こうした取り組みが実を結び、23年春は「1級自動車科」の入学者数が定員を上回った。日産自大の本廣学長も「一級資格を持つ人の数が順調に増えていけば、将来は一級と二級の違いが大きくなるのでは」との見通しを示す。

一方で課題もある。入学者が増加すれば、学校設備の拡充が必要になる場合もある。トヨタ東京自大では一級課程の入学者が増加するにつれ、「教室と実習場の数が足りない」(上田校長)状況に直面している。ただ、大掛かりな設備投資は、安定した学校運営を進める上で慎重に判断せざるを得ない。このため、一級課程の定員拡大は、「簡単には増やせない」(同)との事情を打ち明ける。

また、一級課程は二級に比べて修学期間が長くなるため、保護者の経済的負担が増す。ホンダテクニカルカレッジ関東(埼玉県ふじみ野市)の勝田啓輔校長は「その負担に耐えられる家庭はそれほど多くない」と指摘。「学校としてサポートできないか考えている」と、何らかの経済的支援の必要性を訴える。

少子高齢化は整備学校の経営を直撃しており、コロナ禍で外国人留学生の入学も大幅に減少するなど、厳しい状況に直面している。そうした中で一級取得を志す高校生が増えていることは、明るい材料であることに間違いはない。リスクがあるのも事実だが、この好機をどのように生かしていくか、各校の成長戦略が注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞7月3日掲載