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2023年7月06日

高速道路の料金徴収2115年まで延長決定 改正道路整備特別措置法が成立

国会で5月末に改正道路整備特別措置法と関連法が成立し、高速道路料金の徴収期間が最長で2115年まで延長されることが決定した。徴収期間の延長で「高速道路無料化は事実上撤回」の声もあるが、これにより高速道路の老朽化対応や債務返済に必要な財源を確保する。また、自動運転技術やITSの高度化などに対応する新規投資の財源確保も今後の大きな課題だ。高速道路無料化の事実上の撤回より目を向けるべき課題もある。

道路法に基づき、道路は「無料開放」が原則だ。高速道路も05年の道路公団民営化にあたり、建設費用などの債務を完済した後の50年に通行料を無料化すると定めていた。「償還主義」という考え方だ。

12年に中央自動車道・笹子トンネルで起きた天井崩落事故を踏まえて、高速道路の老朽化対策費を補うため14年に法改正を行い、料金徴収期間を15年間延長して65年までとした。

今回の法改正に至った理由は、点検を強化した結果、老朽化で更新が必要な箇所が次々と判明したため。新規事業に対応する必要もあり、65年までとする料金徴収期間では対応が難しいと判断した。

改正道路整備特措法では、債務返済期間を最大50年とし、更新需要に応じて逐次、料金徴収期間を延長しながら実施することとした。更新計画には債務返済が確実にできるという担保を取りながら事業を進める規定を入れている。高速道路料金を確実に徴収するため、車両の運転者に加え、車検証上の使用者に請求できることを明確化するなどした。

1956年以降、約70年間続けてきた高速道路の償還主義。改正道路整備特措法の根底には「債務返済は一丁目一番地」(国土交通省関係者)とする方針が脈づく。更新計画には債務返済がしっかりとできるという担保を取りながら料金設定などを行う考えだ。

とは言え、修繕・更新を実施してその成果を50年間保証することは難しい。50年を待たず再度修繕の必要が発生する事例が将来数多く発生する可能性もある。2115年以降、道路の更新需要がなくなることは現実的にあり得ない。

「高速道路の無料開放は絵に描いた餅だ」。同法案をめぐる国会議論の中で、野党議員からこうした指摘がたびたび挙がった。仮に無料開放を実現しても維持管理などの財源確保という課題が待ち受ける。これは政府も認識していることだ。しかし、この課題解決に向けた議論は同法案審議の中で行われることはなかった。

今回の法改正で、修繕・更新や4車線化などのための財源確保に一定のめどはついた。ただ、自動運転技術とITSの高度化に伴う新規の設備機器や高速・大容量データ通信、セキュリティー体制の構築など、新たな設備投資に必要な予算・財源の議論はほぼ皆無だった。他にも、物流改革や電気自動車(EV)の走行中給電システムの整備など、高速道路に今後求められる機能強化や新規設備は多岐にわたる。

高速道路、一般道路を問わず、整備・管理を着実に実施するためには安定的・持続的な予算・財源の確保が重要との考えを踏まえ、昨年後半から政府の税制調査会などで改めて浮上してきたのが走行距離課税の導入検討だ。人口や保有台数の減少、EVをはじめとする電動車の普及に伴う燃料税収減などを背景に、道路の維持・管理費をまかなう代替財源の手当てが必要とする財務当局のロジックである。

将来の高速道路のあり方を議論することは、将来の自動車関連税制のあり方の議論にも密接に関わってくる。その逆もしかり。ともに受益と負担の考えに基づく制度であり、国民的議論・検討を深めていくことが求められている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月3日掲載