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自動車産業インフォメーション

2023年6月28日

自動車メーカー各社 初任給、人材確保へ引き上げ幅拡大

自動車メーカー各社が初任給の引き上げ幅を増やしている。今年の春闘では、組合側の要求に対し11社がそろって満額回答し、初任給も引き上げた。賃上げ総額が1万9千円のホンダと、1万3400円のヤマハ発動機は、大幅に初任給を引き上げた。物価上昇への対応に加えて、優秀な人材を確保する狙いがある。

デジタルなどの専門人材から技能系人材まで、今や業種を超えた争奪戦が激しくなる一方だ。年功序列色も薄れつつある今、優秀な学生に自動車産業を進路の選択肢に加えてもらおうと、各社は初任給を積み増す。

ホンダは大卒で2万3千円、大学院卒で2万1千円、高専卒・短大卒で1万4千円、高卒で1万円、ヤマハ発は大卒で9千円、初任給を引き上げた。ホンダの担当者は「これだけの初任給引き上げは稀(まれ)」と話し、ヤマハ発の広報担当者も「9千円レベルの引き上げは珍しい」と語った。スバルは大卒未満で1万2千円積み増したほか、日野自動車やいすゞ自動車、マツダも初任給を引き上げた。

スズキとダイハツ工業、UDトラックス、川崎重工業は、初任給引き上げを「検討中」とした。スズキは「重要性は認識している。地域性などを踏まえ、今後決めていく」(担当者)と説明した。

マイナビが2月に実施した「2024年卒企業新卒採用予定調査」によると、初任給引き上げに関する取り組みで回答企業数約2036社のうち、初任給の引き上げを「すでに導入・改正」「2023年内に導入・改正予定」「検討中」と回答したのは59・2%だった。製造業(回答企業数696社)に限ると62・7%とさらに上昇する。

日本企業では、「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングが新卒初任給を25万5千円から30万円に引き上げた。マイナビの担当者は、こうした初任給を含む賃金の引き上げについて「グローバル企業では、海外に比べて日本の平均賃金が長期間上がっていないことが問題視されていた」と指摘する。

この調査では、初任給や給与を増額する企業に対し「企業への関心も志望度も高まる」と答えた学生が68・2%にのぼった。マイナビ担当者は「賃金引上げの動きは競争が厳しくなっている新卒採用活動で重要なポイントになりそうだ」とする。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)やSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)をけん引するデジタル系から、日本企業が強みとするものづくりを担う技能系まで、自動車産業は幅広い人材に支えられているだけに、人材獲得競争に競り勝とうとメーカー各社は待遇改善を急ぐ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 中高生,大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞6月27日掲載