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自動車産業インフォメーション

2023年6月16日

自動車部品メーカー各社 新規事業、自社の製品や技術を応用

自動車部品メーカー発の新規事業が増えている。ブリヂストンは物流ロボットなどを手がける「ソフトロボティクス ベンチャーズ」を2月に設立。東海理化はゲーミング機器に参入した。豊田合成は自社工場でイチゴ栽培を始めている。いずれも自社の技術や製品を応用するが、社員からアイデアを募り、挑戦を後押ししていることも特徴と言える。

「これほど多くの提案があるとは思わなかった」と語るのは椿本チエインの木村隆利社長。昨年、新規事業を社内から募る「T―スタートアップ」を初めて実施した。寄せられたテーマは100件にも上り、海外からの応募もあった。「将来性」「競争優位性」などの項目に沿って審査し、社外コンサルタントによる支援も受けながら社内ベンチャーの立ち上げを目指す。

GSユアサも昨年、初めて社内公募を行い、エンジニアを中心に数多くのアイデアが集まった。村尾修社長は「当社には電源・電池の開発で培われた唯一無二の技術と、それを活用できるエンジニアがいる。事業に対する『目利き』は必要だが、大きな可能性を感じている」と期待する。

村尾社長が指摘するように、自動車部品メーカーはそれぞれの得意分野で優れた技術と人材を抱える。ブリヂストンのロボットは、ゴム技術を生かしたラバーアクチュエーター(作動器)により、形や大きさ、重さが異なるさまざまな物体を持てる。高い入力応答性を持ち、激しいプレーにも耐える東海理化のゲーム用キーボードには、車載スイッチの磁気センシング技術が生かされている。

自動車部品メーカーが自社技術と親和性の高い新規事業を模索するのはこれが初めてではない。ただ、今回は社内からアイデアを募り、応募した本人に事業化を任せる事例が多い。豊田合成でイチゴ栽培に汗を流す藤井康平氏は、自ら社内コンテストに応募して実証にこぎ着けた。

日光の代わりに用いる同社製LEDの照射時間や温度、湿度などをスマートフォンのアプリで制御し、再生可能エネルギーを併用して「低炭素農業」の事業モデルを目指す。「安心・安全なイチゴを年間を通して供給したい」と意気込む。

少子化やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応を踏まえ、将来を担う人材の確保は各社共通の課題だ。ただ、福利厚生や待遇を手厚くするのは限界もある。素材メーカー首脳は人材確保の要諦を「処遇のほか、やりがいのある仕事かどうかが重要だ」と指摘する。こうした社内公募やベンチャー制度は、社員に挑戦する場を提供しつつ、「人財重視」を社外にアピールすることにも役立ちそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月10日掲載