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2023年6月14日

ドライブレコーダーに付加価値 広がる「通信型」、交通事故発生時は自動通報

通信型ドライブレコーダーを用いたテレマティクスサービスが広がりつつある。走行時の映像やデータを活用して安全運転に役立てるサービスは、以前から損害保険各社が積極的に導入している。市販品でも交通事故の発生時に自動通報できるなどの機能を備えた製品が登場している。

あおり運転などの社会問題から、急速に販売が伸びたドライブレコーダー。今は普及が一定の水準に達し、市場の伸びが鈍化しつつある。こうした中で、製品の付加価値をいかに高めていくかが、これからの市場拡大の鍵を握る。今後、本来の録画機能だけでなく、通信技術を生かした新たな機能の市場投入が加速しそうだ。

通信型ドライブレコーダーのテレマティクスサービスで目立っているのが、事故自動通報機能だ。多くのメーカーの製品で採用が始まっており、4月に日本市場へ参入した英ネクストベースも事故の衝撃などに応じて救急要請を行う「SOS機能」を競合製品との差別化のポイントとしている。

国内メーカーでもコムテック(大川晋悟代表、愛知県東郷町)が衝撃を検知すると、家族などのスマートフォンへ通知する機能を一部製品に取り入れている。各社は車両周囲の状況を記録する本来の機能に加え、さらに安心や安全を高められる装備として、販売促進に力を入れている。

また、ドクターヘリと通信型ドライブレコーダーを連携する試みも出ている。救急ヘリ病院ネットワーク(HEM―Net)と東京海上日動火災保険、緊急通報サービスを手掛けるプレミア・エイド(吉澤成一朗代表、東京都千代田区)の3者は、ドライブレコーダーから送られたデータや事故画像を基に、必要に応じて消防機関やドクターヘリ基地病院に通報する「第2種Dコールネット」の試験運用を始めた。現場の状況から緊急性の有無を素早く判断することで、速やかな救命につなげる狙い。

第1種は車両の事故情報計測・記録装置(EDR)のデータを活用するため、新車でなければ装備が難しかった。しかし、第2種は通信型ドライブレコーダーを利用するため、既販車にも対応しやすい。より多くの車両に、先進サービスを提供できる手段として期待が高まっている。

このほか、JVCケンウッドはNTTコミュニケーションズ(丸岡亨社長、東京都千代田区)が4月に開始したテレマティクスサービス「リンキースドライブ」に自社製品の提供を開始。こうしたさまざまなサービスに、メーカー側が製品供給で協力する動きも活発になりそうだ。

一方、こうした付加機能を使うためには、通信費用がかかる。通信型ドライブレコーダーを本格的に普及させるには、「月ごとの通信料について顧客からどう理解を得るかがポイントだ」(イエローハットの担当者)という声も上がっている。販売現場では多様化するテレマティクス機能を正しく説明できるスキルとともに、顧客へのコストに対する理解を求めていく力も必要になりそうだ。

カテゴリー 交通安全
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月10日掲載