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2023年6月02日

損保ジャパン SDGs学べるカードゲーム、人材採用にも貢献

損害保険ジャパンが開発したSDGs(持続可能な開発目標)を学べるカードゲームが2022年1月の導入開始から、ディーラー代理店での利用回数が全国で64回、参加人数が延べ約1200人になった。ディーラーは従業員教育に活用しているだけではなく、新たな人材確保につながるツールとしても役立てている。

この背景には学生が社会貢献への関心が高く、SDGsの対応強化が採用に直結していることがある。同社にとっても、取引が少なかったディーラーとの関係を深めることができるなどの効果が生まれている。

「ザ・アクション!~SDGsカードゲーム~」は損保ジャパンが富山県内の企業と共同開発した。ディーラーでは22年度に47回、23年度(5月25日現在)は17回使われた。延べ1164人が参加したという。

このゲームは最大で66人(22チーム)が参加できる。それぞれ医療機関や役所、企業など役割を担当し、よりよい地域社会をつくるように作業していく。経済的発展だけではなく、環境面や社会面でもバランスがとれるようにすることがポイント。3セットやるが、それぞれが協力しあわないと目標を達成できないことに気付く結果になることが多い。

「ゲームは2~3時間かかるので拘束時間が長いと言われるが、やってみるとのめりこむ。『腹落ち』するのがカードゲームのよいところ」―。損保ジャパン経営企画部サステナビリティ推進グループの岡本かなえさんはこう話す。

ディーラー側にはどのようなメリットがあるのか。従業員がSDGsを理解するきっかけになるほか、人材確保の面での効果が期待されている。就職活動に臨む学生は、その企業が社会に貢献しているか、という観点でも会社を選ぶケースが多い。

こうした実績をホームページなどで開示していくことも重要だが、入社してからも社会貢献を実感できるようにする必要があるという。このゲームはこうしたニーズを満たせるほか、ディーラー内で考え方を共有し、どのような社会貢献に取り組んでいくべきか、ヒントを得ることができるようだ。

投資面でも効果がある。運用資産額160兆円という年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に代表される機関投資家の多くが、SDGsの趣旨に沿った企業への投資を重視する方針を打ち出している。それぞれのディーラーがSDGsの施策を充実すれば、メーカーをはじめとするグループ全体に新たな投資を呼び込む可能性も少なくない。

このカードゲームのプロジェクトを立ち上げた岡本さんのきっかけは何だったのか。岡本さんは13年4月に入社し、広島自動車営業部に配属になった。20年春ごろ、取引が少ないディーラーから「地域貢献に関することで何かできないか」と相談された。非営利団体(NPO)のカードゲームを知り、これはいいと確信。自社でも全国で取り入れたいと考えたという。

よいアイデアを役員に提案する制度(現イノベーションチャレンジ)に挑戦し、2回目で採用された。希望する部署に行ける制度(現キャリア支援制度=3年後に元のエリアに戻る)にも手を上げ、21年4月に現在の部署に異動。オリジナルゲームの開発を始めた。今や同社の中では、このゲームの進行役ができる資格者が約1300人いるなど大きな成果を実らせた。

この2つのキャリアアップ制度も、利用者がかなりの規模になり、増加傾向にあるという。「東京に来て社内の仕組みが分かった。広島時代は営業先しか見ていなかったが、全社的な視点ももてるようになった」という岡本さん。広島時代の上司が2つの社内制度を紹介し、後押ししてくれたという。「社内にはいろいろな制度がある。それらを充実させる担当者と、若手の選択肢を増やすリーダーの2つの層の育成に会社が本気で取り組むことが大事だと思う」とみている。

カテゴリー 社会貢献
対象者 大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞5月29日掲載