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2023年5月12日

茨城の産官学プロジェクトとヤマハ発動機 街づくりと新モビリティで脱炭素

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現を目指す茨城県の産官学プロジェクト「つくば3Eフォーラム・次世代エネルギーシステムタスクフォース(TF)」とヤマハ発動機は、モビリティと街のあり方をテーマとしたイベント「ひとまちラボつくば」を、つくばイオンモール(茨城県つくば市)で共催した。

電動アシスト付自転車の進化版といえそうな大きな荷室や客席を備える〝新しい乗り物〟の試乗会を開くとともに、同TFの座長を務める筑波大学の石田政義教授らのトークセッションを行い、脱炭素と今後のモビリティを考えてもらう機会を提供した。

ひとまちラボは、ヤマハ発が多様なニーズに応えるモビリティや道路環境のあり方をを探ることを狙い展開しているイベント。一方、同TFは、再生可能エネルギーや水素を地産地消する街づくりとともに、新しいモビリティによってカーボンニュートラルの達成を図る「つくばグリーンホロニズム構想」を進めている。

両者は新しいモビリティを模索するという共通項があること、そしてヤマハ発が同TFに参加していることもあり、イベントを共催してホロニズム構想の狙いと次代を担うモビリティの方向性を広く発信することにした。

トークセッションでは、石田教授と、同TFで脱炭素社会に対応したパーソナルモビリティを研究する日本自動車研究所(JARI)の森田賢治氏、欧州のモビリティに詳しいジャーナリストの森口将之氏が登壇した。

石田教授は「ゼロカーボンエネルギーへの取り組み」と題し、再生可能エネルギーシステムの社会実装への取り組みや、茨城県における水素サプライチェーンづくりの構想などをレクチャーした。

森田氏は「ホロニズムモビリティ」として検討している太陽電池を搭載した「電動アシストリカンベントトライク」の概要を発表。太陽電池から得た電力でペダルこぎをアシストしたり、フル電動走行を可能にするモビリティだ。フェアリング(カウル)を装着し雨風や衝撃からの乗員保護を図るなど、省エネルギー・低CO2で安全な車両仕様を具体的に示した。

森口氏は、仏パリ市が脱炭素の一環として力を入れる自転車政策を取り上げ、自転車シェアリングや合計1千㌔㍍に達しさらなる拡張を計画する自転車専用レーン、交通教育などの状況を紹介した。トークセッションでは来場者の質問を受け付け、活発な議論が行われた。

ヤマハ発は3台のモビリティを会場に持ち込んだ。うち2台は子どや荷物を安定して運送できる電動アシスト三輪カーゴバイクで、来場者に試乗してもらった。

もう1台は「社内有志でアイデアの一つを具現化した」(ヤマハ発クリエイティブ本部フロンティアデザイン部・吹田善一部長)という試作車「XEV2」だ。フル電動もしくは電動アシスト付きペダルをこいで走行可能な四輪スタイルの1人乗りモビリティで、最高時速は30㌔㍍。その出来映えをJARIの森田氏は「理想のモビリティにかなり近い」と評する。ヤマハ発はXEV2をひな形として活用し、新しいモビリティーを模索していく。

石田教授は、ホロニズム構想について「着々と進んではいる。ただ(政府が2030年目標に掲げた温室効果ガス排出量の)46%削減まであと7年しか時間が残されていない」と、懸念を露にする。カーボンニュートラルの達成に向けては、さまざまな実証実験の成果が発表される。しかし、それらが社会に実装され効果を発揮している例は極めて少ないため「今ある技術を使い、できることから始めることが(削減目標の達成で)重要だ」と述べる。

さらに石田教授は「1・5㌧以上もあるクルマに乗って1人で移動するのではなく、軽量なモビリティを利用して、エネルギー消費を減らすことも必要になる」と、モビリティーの転換も脱炭素の鍵を握ることを強調した。石田教授らは同TFの活動を通して、再エネの社会実装やモビリティーの新しい形を具体化し、カーボーンニュートラル達成に道筋をつけたい考えだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月8日掲載