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2023年5月12日

若者にも響く! 年齢超え根付く「ヘリテージカー」の魅力

自動車産業の歴史に残る名車をはじめとする「ヘリテージカー」の人気が、高まっている。こうしたモデルは、国内の中古車市場でも高値で取引されており、需要拡大を裏付ける。かつて憧れだったモデルを手に入れようとする中高年のユーザーが、販売増を支えているとみられるが、実は若年層のファンも広がっている。

ヘリテージカーを集めたイベント「オートモビルカウンシル2023」でも、若者たちの来場が目立った。若者のクルマ離れが指摘されるが、古いモデルが切り口となって、新たな若いユーザーを誘引していく可能性もありそうだ。

「最近は20代などの若い人が増えた」と話すのは、同イベントに初回から毎回出展しているヴィンテージ宮田自動車(宮田篤社長、三重県川越町)。これまでの購入者の大半は50~60歳代以上だったが、「購入する年齢層が変わってきている」という。シトロエン専門店のアウトニーズ(二井浩之社長、京都市伏見区)も、「ここ2~3年くらい、学生や20歳代の来店が増えている」と口をそろえる。

なぜ若者の間で人気が高まっているのか。オートアルファワン(井上雅文社長、京都市右京区)では「クルマ本来の美しさに新鮮味を感じるのでは」とみている。明治産業(竹内眞哉社長、東京都港区)も「デザインの型が決まった今のクルマではなく、オリジナリティーのあるクルマを好むのでは」と、現代のモデルにはないデザイン性に引かれていると分析する。

一定の年代以上には懐かしいと感じるデザインも若い世代にとっては初見となるケースが多く、新しいクルマとして目に映る人が多いことも影響しているとみられる。

さらに、「著名人が乗っているから乗ってみたいという人もいる」(アウトニーズ)との声もある。会員制交流サイト「インスタグラム」では、有名人やインフルエンサーが愛用しているヘリテージカーの傍らで、撮影された写真や動画をよく見かける。ヘリテージカーは今の若者のおしゃれを演出するアイテムの一つになっているようだ。

長野県から友人らと同イベントに来場した20代の男性は、自身でも1960~70年代に発売されたBMW「2002」などを所有しているという。ヘリテージカーの魅力について「ロマンチック。昔の音楽をかけて、昔の洋服を着て、昔の車に乗るのが魅力的」と声を弾ませる。

若者からの人気が高まっていることについては「映画やアニメなどのサブカルの影響が強い」とも指摘する。例えば、2001年から続くハリウッドのカーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズは、日本車を含めた数々の名車が登場するのも魅力の一つ。アニメでは「ルパン三世」やジブリ映画などでも旧車が登場し、ストーリーの世界観を作り上げるのに一役買い、その味わいを深くしている。

今回のイベントでは所狭しと並べられたヘリテージカーによって、在りし日の時代にタイムスリップしたかのような気分に浸れる雰囲気となっていた。長野県から来場した20代の女性は、「古着ブームが先に来て、昔の音楽、車と続いたように感じる」と話す。若者にとってヘリテージカーは自分自身を表現するためのツールにもなっており、一つの文化として根付き始めているようだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月9日掲載