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2023年5月11日

新型コロナ5類移行 部品メーカー「共創活動」に追い風、対面ハードル下がる

8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類扱いとなった。行動制限が緩和され、対面でのコミュニケーションが復活することで自動車部品メーカーが取り組む「共創活動」にも追い風となりそうだ。コロナ禍においてもイノベーション(革新)拠点を新設した企業もあり、多様な経験や意見を持つ技術者らが起こす「化学反応」も進みそうだ。

新型コロナの5類移行により、政府はソーシャルディスタンスの確保などを求めていた「基本的感染対策」を廃止し、対策の実施を個人や企業の判断に委ねる。ここ3年ほどは行動制限を伴う措置が繰り返され、経済活動に大きく影響した。今後も一定の感染対策は必要で、リモート会議などのコロナ禍での〝学び〟もある。しかし、対面活動に向けたハードルは下がり、気候変動対策や自動車業界の変化に複数社で取り組む共創活動には追い風となる。

AGCは2020年11月、横浜テクニカルセンター(横浜市鶴見区)内に「協創空間『AO(アオ)』」を設けた。社内外の人材をつないで新たな発想を生み出し、すぐに試すオープンイノベーションの拠点とする。

特にモビリティ領域は取り組みが先行している。「グリーンスローモビリティ」を製造するシンクトゥギャザー(宗村正弘社長、群馬県桐生市)との活動では8つのアイデアを生み出し、第1弾として開発中の技術を用いた防曇ガラスが採用された。AOには昨年、約600件弱の来場案件があり、ここを拠点に「時代の変化に対応し、社会課題の解決に貢献していく」(広報部)考えだ。

ブリヂストンも22年4月、東京都小平市の研究開発拠点で「ブリヂストンイノベーションパーク(BIP)」を本格稼働させた。コロナ禍でBIPの整備に約300億円を投じた背景には、変革期を迎えたモビリティ業界で「無理してでもやらないと、社会の流れに追いつくことはできない」(坂野真人グローバルCTO)との危機感があったという。

石油元売り大手のエネオスとは、廃タイヤを原料に戻す技術の研究が進むほか、同社初の社内ベンチャーとして、ゴム技術を応用した「ソフトロボティクス事業」も発足を目指す。隣接するテストコースでは自動運転スタートアップのティアフォー(加藤真平社長、名古屋市中村区)との共創活動が進んでいる。

新拠点の立ち上げを機に共創活動を本格化する動きもある。日本ミシュランタイヤは今夏、群馬県太田市の研究開発拠点に本社機能を移し、タイヤの枠にとらわれない共創活動に取り組む。22年4月には最新の金属3Dプリンターを設置した「AMアトリエ」を開設。地元の中小製造業などがここを拠点に共同開発プロジェクトを進めている。

ドライビングシミュレーターを手がけるS&VL(村松英行代表、東京都江東区)とは今年、「シミュレーション技術研究所」を敷地内に構え、タイヤや車両モデルの開発に活用する。同社は「産学官連携でさらなる価値を生み出せる」と期待する。

ボッシュも横浜市都筑区に24年竣工予定の研究開発拠点を建設中だ。区民文化センターが隣接しており、地域に開かれた文化拠点を目指す。

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)をはじめ、経済活動におけるサステイナビリティー(持続性)の確保や、地域社会と共存する重要性が増している。部品各社はさまざまなパートナーとの共創を通じ、社会課題を解決する製品やサービスの開発を急ぐ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月8日掲載