2023年5月09日
中古車サブスク、自動車メーカー相次ぎ参入 割安感で契約数伸ばす
中古車のサブスクリプション(定額利用)サービスを展開する自動車メーカーが増えている。ホンダやトヨタ自動車、日産自動車、スズキ、スバルに続き、ダイハツ工業も近く参入する。新車リースと比べて割安な価格で車両を利用できるメリットから利用件数は増加。ホンダは直近1年で会員数と稼働台数が2・5倍に拡大した。
一方、中古車の〝タマ不足〟でサービスの新規受け付けを停止したメーカーも出ている。新たな顧客獲得のツールとして期待される中古車サブスクだが、当面は商品車を確保する仕組みづくりが課題になりそうだ。
自動車メーカーで初めて中古車サブスクを展開したのはホンダ。同社の「マンスリーオーナー」は月額料金に、税金やメンテナンス費用、保険料を含めている。最短1カ月から最長11カ月の期間であれば、違約金なしで解約できるのも特徴だ。2020年1月に埼玉県の一部店舗で開始し、22年4月には全国47都道府県にサービス地域を拡大した。
全国展開したことに加え、「中古車相場の上昇でより買い得感が高まった」(ホンダ担当者)ことも後押しし、23年3月末時点の稼働台数は925台(前年同期実績は370台)、会員数は9368人(同3859人)と1年間で大幅に増加した。掲載台数の1092台に対する稼働率も84・7%と高いことから、今後さらに台数を増やす方針だ。
一方、中古車サブスクの利用拡大に向けた課題が中古車の確保だ。足元では緩和傾向にあるものの、半導体不足による新車の供給遅れに伴って中古車の流通台数が減少。サブスク用の車両も確保しにくい状況が続いている。
21年3月に神奈川県と新潟県でサービスを開始したスバルは22年秋、この課題解決にめどが立たず、新規の申し込み受け付けを停止した。中古車サブスク用の車両不足は業界共通の問題となっており、ホンダは「小売り向けの車両うち、長期滞留している車両の活用を販売会社に促す」(同)ことで掲載台数を増やす考えを示す。
サービスの提供を開始したものの、一部地域での展開にとどまるメーカーが多い中、ホンダ以外で展開地域を拡大しているのがトヨタ系のKINTO(キント、小寺信也社長、名古屋市中村区)だ。同社は22年7月に中古車版のサブスク提供を開始。当初は東京都と愛知県のみの展開だったが、23年内には大阪府と福岡県にも地域を広げることも検討している。
キントの場合、サブスクで貸し出す中古車は、新車サブスクのリースアップ車のみを対象としている。現状は供給が限られるため、商品化工程を見直すなどしリードタイムを短縮する方針だ。
日本自動車リース協会連合会(JALA、上谷内祐二会長)がまとめた22年の自動車リース契約台数(会員分)によると、「リースバック・中古車リース」は前年比6・7%増の8万1800台に増加した。自動車メーカーが相次いで参入する中、今後、中古車の流通量が回復すれば、中古車サブスクの存在感が一段と高まるとみられる。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞4月26日掲載