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2023年3月29日

自工会、二輪車の死亡事故削減へ ヘルメットなど正しい着用啓発が急務

日本自動車工業会(豊田章男会長)が二輪車の死亡事故削減に向けた啓発活動を強化している。これまでも乗車時のヘルメット離脱防止や「胸部プロテクター」の装着などを呼びかけてきた。交通事故死者が減少する中で、自動二輪乗車中の死者はわずかながら前年より増えた。経済産業省が「二輪車産業政策ロードマップ」で掲げる「50年に二輪車事故死亡者数ゼロ」を達成するためにも、自工会は関連団体などと連携し、啓発を続けていく。

ロードマップでは「30年に20年比で事故死者数半減」を経て「50年に事故死者数ゼロ」を目指す。自工会主体で取り組むのは安全教育の領域だ。また、安全装備の普及拡大などでも関連団体と連携し、事故防止につなげる活動を展開している。

22年度の交通事故死者数を車種別でみると、原付が前年実績に比べて39人減っているが、自動二輪では11人増加した。損傷主部位別では「頭部」「胸部」が合わせて7割程度を占めており、まずは胸部プロテクターやヘルメットを正しく着用することが死亡事故の回避に重要となる。

ヘルメットは道路交通法で着用が義務づけられている。ただ、25年以上も二輪車による死亡事故の約3割を「ヘルメットの離脱」が占めている実態もある。例えフルフェイスであっても、あご紐を正しく締めなければ衝突の衝撃でヘルメットが離脱し、頭部の損傷を招く。

排気量の小さい二輪車ほど離脱率が高く、原付一種では41・8%を占めている。「ヘルメットは着用が義務づけられているものの、あご紐の締め方まで義務づけられているわけではない」(自工会)。あご紐のちょっとした緩みがヘルメット離脱という重大な結果を招く。

胸部プロテクターはヘルメットとは異なり、着用が義務づけられていない。自工会が二輪車ユーザーを対象に実施した調査によると、着用率はわずか9%にとどまる。二輪車ユーザーのうち、認知しているユーザーは75%だが、認知していないユーザーも25%もいた。

16~29歳の若年層では男女ともに認知率は8割を超えているものの、年齢層が高くなるにつれて認知度が下がり、60~79歳の男性では32・6%、女性では30~49歳が33%、50~79歳では42・4%が「(存在を)知らない」と回答した。若年層の認知度が高い理由は、教習時に胸部プロテクターなどを装着していたことが要因とみられる。

二輪ユーザー全体では「必要性を感じているものの、胸部プロテクターを所有していない」と回答したのが約5割、「持つ必要性を感じない」と回答した人も約3割にのぼった。自工会二輪車委員会・二輪車企画部会の飯田剛二輪車安全教育分科会長は「必要性を感じている5割にいかに保有させるかが重要だ」と指摘した。

自工会では、ヘルメットや胸部プロテクターの装着に向けて、二輪関係団体などと連携し、認知率や保有率、着用率を高めていく方針だ。また、二輪だけでなく四輪ドライバーへの安全啓発も推進する。自工会内で四輪と二輪の連携チームをすでに立ち上げ、23年にも四輪ドライバーの啓発活動を推進していく考え。

電動キックボードなど新たなモビリティも登場する今後は、車種ごとの安全対策とともに、車両特性などを共有する包括的な啓発活動も求められる。二輪車委員会の日髙祥博委員長(ヤマハ発動機社長)は「すでに(自工会メンバーからは)さまざまな意見が出ている。二輪委員会でも話し合っていく」と、具体的な活動を検討していく考えだ。

カテゴリー 交通安全
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月22日掲載