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2023年3月15日

国内化学メーカー定年延長の動き ベテラン社員活躍の場広がる

国内化学メーカー各社が定年延長に動き始めた。住友化学は2024年4月から段階的に定年を60歳から65歳に引き上げる。積水化学工業も定年延長を済ませていないグループ会社へ展開を急ぐ。ベテラン社員が安心して働ける環境を早期に整え、人手不足の緩和や若手技術者への技術伝承につなげる。

定年延長への実現に向け労使協議中の住友化学。協議がまとまれば定年を現在の60歳から65歳へ段階的に引き上げる。現在、同社は60歳以上の社員が約3%だが、10年以内には最大17%まで増える見通しという。65歳定年が完全実現した場合は、60歳以降も従事する職務や役割に基づき、継続的な人事評価で処遇するため「60歳で(大幅に)年収を落とすことなどはしない」(新沼宏副社長)としている。

積水化学は21年度、「選択定年制」の導入とともに定年を60歳から65歳に引き上げた。選択定年制は、定年退職前に従業員が自らの意思で退職年齢を決めることができる制度だ。25年度をめどにグループ全体へ展開する。

国内大手化学メーカーの中で先行して定年延長を導入した信越化学工業は、ベテラン社員が経済的に困らないよう、60歳以降の給与水準について、59歳時点の8割を支給している。

車載用ヘッドライトなどに採用されているLED(発光ダイオード)を手がける日亜化学工業(小川裕義社長、徳島県阿南市)も16年4月に定年年齢を60歳から65歳に引き上げた。豊富な業務経験を持つ人材をつなぎ止めて人手不足に備えている。

一方で、定年延長により、組織の新陳代謝が鈍ることを懸念する声もある。積水化学は「後継者の育成と(管理職などへの)任命を促進することで対応している」という。住友化学は「後進に(権限や役職などを)譲りつつ、ベテラン社員のモチベーションを維持する仕組みは必要」としている。

厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告(22年)」によれば、定年の引き上げを実施した従業員数301人以上の企業は、21年6月比で307社増の2749社。従業員数21~300人の企業では同3933社増の5万7288社だった。化学業界に限らず、ベテラン社員の活躍の場が広がりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月11日掲載