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2023年3月10日

東日本大震災から12年 日産が支える被災地のモビリティ

東日本大震災から3月で12年を迎える。日産自動車は、モビリティ分野で被災地の復興を支える。2021年11月から福島県浪江町で「なみえスマートモビリティ」と呼ばれるオンデマンド配車サービスの実証を始めた。地域住民の「日常の足」だけではなく、観光客の交通手段としても活用されている。23年1月からは有償化に踏み切り、持続可能なサービスを全国へ広げる道筋を探っている。

日産と浪江町は、復興と持続可能なまちづくりの実現に向けて連携を深めている。21年2月には相双地区の3市町(浪江町、双葉町、南相馬市)と、日産をはじめ8企業が連携協定を結び、周辺自治体を含め復興に向け一丸となって取り組んでいる。

日産がスマートモビリティを展開する浪江町は、震災当時の人口が2万1千人(7671世帯)だった。しかし、現在(22年12月末)は1947人(1190世帯)と10分の1程度に減少した。このため、多くの自治体が抱える公共交通の維持や継続が一段と深刻な課題になっている。

21年から無償での実証実験を開始したが、23年1月には運賃を有償とする実証実験をスタートした。有償化後、記者もスマートモビリティを体験してみた。車両の呼び出しはいたってシンプルだ。町内の商業施設や宿泊施設に置かれた専用端末で行先や人数などを入力するだけで車両を呼び出せる。今回の体験では、施設に設置された専用端末を使ったが、スマートフォン(スマホ)にアプリケーションをダウンロードし、ユーザー登録すればスマホでも呼び出せる。

試乗コースは、JR浪江駅から「道の駅なみえ」までのおよそ1㌔㍍。専用端末で必要事項を入力すれば、車両が到着するまでの待ち時間が表示され、イライラすることも少ない。運行状況や道路状況によっても異なるが、およそ数分程度で車両が到着する。運賃は時間帯や距離に応じて異なるが、200~800円(夜間割り増し料金は含めず)となっている。

24年度には、日産以外の事業者による商用運行を開始する予定だ。日産は、車両や運行システムの提供などを続けつつ、事業者へ運営を移していくことになる。担当役員の中畔邦雄執行役副社長は「持続性あるものにしていくことが大切だ」と取り組みの意義を語った。日産は、浪江町での事例を生かし、同様の課題を抱える地域でのモビリティサービスの提供に向けて力を入れていく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月25日掲載