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2023年3月03日

人気高まる軽トラック中古車 低年式でも高値で取引、趣味や海外需要も

軽トラックの中古車人気が高まりを見せている。農業など第一次産業では必要不可欠な存在だが、最近では個人の趣味や海外でも人気を集めている。軽トラは壊れなくて丈夫、モノも運べるなど利便性の高さがグローバルで支持されている。中古車相場も高値で推移し、在庫回転率も高いという。軽トラの需要は仕事から趣味、海外へと広がりを見せており、中古車としての存在感がさらに増しそうだ。

1960年代に四輪の軽トラックが発売され、ボディーサイズやエンジンの排気量拡大を経て、市場を形成してきた。軽トラの新車販売台数は、1983年に年間約43万台を記録。以降、保有の長期化や離農などで新車需要は減少が続き、2022年の軽トラ新車販売台数は約17万台と、全盛期の約4割の水準となった。

当時は、各ブランドが軽トラを生産していたが、現在はスズキとダイハツ工業の2ブランドが新車を生産、他の5ブランドにOEM(相手先ブランドによる生産)供給している。

軽トラの需要は、農業など仕事のパートナーとしてのほか、複数台所有する世帯や高齢ドライバーの生活の足など幅広い。軽の新車販売代理店を手掛ける北関東地区の整備事業者は「視界が良くて使いやすいので、高齢者が好んで軽トラを選ぶことがある」という。セニアカーの代わりに所有する高齢ドライバーも存在し、地方で軽トラをよく見かけるのは、利便性の高さゆえといえる。

軽トラ人気は、中古車市場でも乗用車とは少し異なる動きが見られる。軽トラの代替時期は、保有期間が長ければ20年、短くても10年以上経過した車が中心だ。代替の理由は、エアコンが故障したとかパワーステアリング付きがほしくなったなどの理由が多いという。逆に、ペダル踏み間違い防止や車線逸脱警報など、安全関連装備が標準装備されたことによる代替は少ないようだ。

先の整備事業者は「20年前の軽トラも高値で取引される。古くても、四輪駆動車(4WD)ならば、エアコンやパワステなしでも需要はある」と状況を語る。軽トラは、農場など私有地限定で荷物を運ぶ用途で選ばれることもあるため、あえて低年式が好まれる状況もある。関東地区の中古車オークション(AA)関係者も「二十数年前の軽トラは、成約状況が良い。軽トラの相場は以前から高値で推移している」と状況を説明する。

こうした状況のため、高年式の中古軽トラが市場に出回るケースは少ないようだ。高年式の軽トラを下取りに出して、また新車の軽トラを購入するユーザーは、事情により離農したケースや小破の事故損傷で代替などがあるという。中には「家族も乗れるようにと、マニュアル車からオートマチック車へ代替するケースも、この数年で増えてきた」(北関東の整備事業者)と、軽トラのオートマ車の販売比率が伸びているという。

コロナ禍による新しい生活様式やアウトドアブームなど、軽トラを趣味の領域で活用するユーザーが増えている。また、海外にも中古軽トラが輸出され、人気を集めている。さらに、日本自動車工業会(自工会)が全国で開催される「軽トラ市」への支援を始めるなど、軽トラに対する注目度は高まりをみせる。

軽トラは、災害時にも力を発揮する。浸水被害などで家庭などから発生する災害廃棄物(災害ごみ)の運搬には軽トラが最も適しており、軽トラユーザーがボランティアで災害地に駆け付けることもある。幅広い用途で使える軽トラの存在価値は大きく、これからも軽トラの中古車相場は高値安定が続きそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月28日掲載