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2023年2月24日

国内タイヤ4社の22年12期決算 売上高は全社増収、地産地消強化で収益確保

国内タイヤ4社の2022年12月期連結業績が出そろった。売上高は全社とも増収を確保したが、利益面ではブリヂストンと横浜ゴムが値上げと高付加価値路線が奏功して増益となる一方、住友ゴム工業とトーヨータイヤが減益を強いられるなど明暗が分かれた。タイヤ需要は23年も堅調な見通しだが、経済環境やエネルギーコストなどの動向は不透明だ。各社は価格や販売構成の見直し、「地産地消」の強化を急ぐ。

■増益2社は値上げで対応

ブリヂストンは売上高が過去最高の4兆1100億円、調整後営業利益も4826億円と前年から22・4%増加した。プレミアムタイヤを中心に値上げを浸透させ、エネルギー価格などのコスト上昇を吸収した。

高い「地産地消率」も業績に寄与した。乗用車用では米国で約90%の現地生産率を誇る。製品を海上輸送する必要を減らし、運賃の高騰影響を抑え込んだ。同社は米国での現地生産率を95%まで高めていく方針だ。

横浜ゴムも23年までの中期経営計画で高付加価値品の拡充を進めており、22年は海外市場を中心とする値上げでコスト影響を緩和し、売上高、事業利益ともに過去最高にまで高めた。農機用などの「オフハイウェータイヤ」も前年比45・2%と大幅に伸びた。山石昌孝社長は「付加価値の高い商品を売ることでヨコハマのブランド力が上がり、特に海外で値上げができた」と語った。

■減益2社は事業環境の悪化に翻弄

減益を強いられた2社は「海外を中心に売り上げを伸ばすことができたが、生産販売の投資効果を十分刈り取れず、収益が悪化している」(住友ゴム工業の山本悟社長)と振り返った。住友ゴムは売上高こそ1兆986億円と過去最高だが、事業利益は前年比57・7%減と半減した。

欧米事業を拡大し始めた16年から減価償却費など固定費がかさんで利益率が低下傾向にあり、エネルギー価格の上昇などが直撃した22年の事業利益率は前年の5・6%から2・0%へ急降下した。

トーヨータイヤも北米市場がけん引する形で売上高が前年比26・3%増の4972億円と伸びたが、営業利益は同17・0%減の440億円となった。原材料高騰影響(▲279億円)に加え、海上輸送運賃の高騰が利益を219億円も押し下げた。清水隆史社長は「海上運賃の増加は想定外だった」と振り返る。

■高付加価値品に注力し、利益の確保を目指す

今年度も不透明な事業環境が続くと予想されるが、各社は高付加価値品に注力しながら、世界の各市場で値上げを早期に浸透させることで増益にこぎつけたい考えだ。

住友ゴムは、23年からの新たな中期経営計画で収益基盤の立て直しを図る。採算性の低いサイズのタイヤを減らしたり、グループを挙げて固定費を下げるなどの事業改革を進め、浮いた経営資源を高付加価値品と成長事業に集中投下する。これにより27年には事業利益率7%を目指す。トーヨータイヤは北米で大口径タイヤの値上げを急ぐなどして営業利益500億円に再度、挑む。

増益組も手を緩めない。ブリヂストンは欧米で高インチプレミアムタイヤのシェアをさらに伸ばし、不透明な事業環境下でも増益を続けたい考えだ。石橋秀一グローバルCEO(最高経営責任者)は「欧米は(昨年)9~12月期は厳しかったが、プレミアム領域はしっかりとビジネスを取った。(今期も)シェアアップして業績を確保していきたい」と語った。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月20日掲載