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2023年2月21日

ロードサービスのEV対応本格化 電欠想定しレッカー搬送や充電サービス

電気自動車(EV)の本格的な普及を見据え、ロードサービスでもEV対応が進んでいる。トラブルで走行不能となった場合のレッカー車での搬送に加え、救援先の現場で一時的に充電を行うサービスの提供に向けた動きも出ている。また、作業に当たるスタッフを対象に、EV特有の高電圧部位の適切な取り扱いにつなげる研修事例も増えている。

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の達成には、電動車のさらなる市場拡大が欠かせない。今後、急速な増加が見込まれるEVユーザーを守る上でも、ロードサービス体制の拡充は重要な鍵を握っている。

ロードサービスの現場では、従来から新型EVの市場投入のタイミングで、メーカーやインポーターのサービス担当者などと協力し、EVのレスキュー時の取り扱いについて技術力を高めている。全日本高速道路レッカー事業協同組合(JHR、亀山善之理事長)でも全国各支部が開催する技術研修会において、EVを盛り込む機会が増えている。安全かつ適切なEVの救援対応を実現することで、作業者を保護する狙いだ。

また、JHRはこれまでハイブリッド車(HV)が中心だった自動車救援士の資格認定試験のテキストの内容に、EVのカリキュラムを取り入れた。組合員のEVに対する技術や知見を高めることで、ロードサービスの品質向上につなげていく。

2022年は「EV元年」と称されるように、メーカーやインポーターがEVの新型車を相次いで国内導入した。特に存在感を見せているのは軽自動車のEVで、国内のEV市場の拡大に貢献している。また、EVを導入した企業や自治体も増えており、業務に使用しない休日に社用車や公用車をカーシェアリングサービスで、一般に貸し出すケースも出ている。

ただ、天候や道路状況などで変わりやすい航続距離といったEV特有の性質に不慣れなドライバーも多くなっており、駆動用電池の容量がなくなる〝電欠〟の発生が今後増加する懸念もある。

電欠になった車両は現状、レッカーで搬送する措置をとるロードサービス事業者が多い。こうした中、救援現場でEVに充電することにより、復旧までの時間短縮を目指す取り組みも出ている。プレステージ・インターナショナルは子会社が主体となり、「EV駆けつけ充電サービス」を展開する。

EV充電機能を搭載した車両を現場に派遣。満充電ではなく、最寄りの充電スポットまで自走できる程度まで給電することで、ロードサービスにかかる所要時間を短くしている。現場での充電は出力約3㌔㍗で20分間行った場合、約10㌔㍍の走行が可能になるという。

あいおいニッセイ同和損害保険もロードサービス事業者などと組み、22年5月から電欠時のEV向け現場充電サービス実証実験を実施した。EVの救援現場に出力20㌔㍗のポータブル式急速充電器を搭載したサービスカーが駆け付け、20分の充電で約40㌔㍍を走行できるまで電池残量を回復する。

最寄りの充電スポットにレッカー搬送する場合に比べ、電欠発生から復旧までにかかる時間が1時間以上も短縮できるケースもあった。現在は、実用化に向けた検討を進めており、今後のEV市場のさらなる拡大に備えて、体制の拡充を図る考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月18日掲載