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2023年2月16日

三菱重工 開発進める車両自動搬送システム、パーキングや運搬に

三菱重工業は、車両の自動搬送システムの開発を進めている。「AGV(自動搬送車)ロボット」が車両を持ち上げ、自動走行で所定の場所まで運ぶ仕組み。バレーパーキングや車両保管場(モータープール)での活用を想定する。ロボットは誤差1㌢㍍、車のドアから人が降りられないほど狭い15㌢㍍の間隔で車両を並べられるなど、高い位置決め精度を確保しており〝腕前〟はプロドライバー以上。

空港やショッピングモールの駐車サービス、完成車搬送業務の人手不足対応、駐車スペースの効率活用といった効果を提案して受注開拓を進める。

車両搬送システムでは、仏ベンチャー企業、スタンレーロボティクスのAGVロボットを使う。三菱重工はロボットの管制ソフト制作に注力している。

ロボットが車両の下に潜り込ませたプラットフォーム(車台)から〝爪〟を出し前後輪を持ち上げて搬送する。GPS(全地球測位システム)やLiDAR(ライダー、レーザースキャナー)を使い自動運転「レベル4」相当の自律走行を可能にした。電気で動く。

車の損傷を防ぐため、精密なタイヤ位置の把握にもライダーを使用する。この機構によって「ドアがロックされパーキングブレーキが掛かったままの車両を運搬可能になった」(三菱重工機械システム設備インフラ事業本部制御システム技術部パーキング担当部長・福島大輔氏)という。キーを預けるなど人手によるバレーパーキングにまつわる不安をなくせることがメリットの1つになる。

ホイールベース3・3㍍以下、車重2・6㌧以下の車両を搬送できる。現在は最低地上高120㍉㍍以上が必要なため、保安基準で定められた同90㍉㍍以上に対応できるよう改良していく。

2022年には酒々井プレミアム・アウトレット(千葉県酒々井町)でバレーパーキングの実証実験を2回実施。AGVロボットの自律走行やスマートフォンと連動した車両の呼び出しなどを試し手ごたえをつかんだ。

商用化は「まだ第1段階にある」(同事業本部自動搬送ロボット事業プロジェクトマネージャー・内生孝史氏)。まずは欧州の空港で導入事例がある自動バレーパーキングからメリットを広め、受注につなげていく考えだ。

「バレーパーキングによって集客力が高まり収益拡大につながることを提案していく。施設の駐車場設計は非常に大事で、待ち時間が少ないほど集客力が高まる傾向がある」(内生氏)とし、こうしたビジネスモデルを訴求していく。乗降場所(バース)の数にもよるが、駐車台数50~100台あたり1台のAGVロボットがあれば快適に駐車できると試算する。すでにロボットのバッテリー充電タイミングを加味した運用シミュレーションを完成し提案に活用している。

さらに「高齢者、車いす、ベビーカーなど広い乗降スペースが必要な人向けの活用を検討してもらいたい。まず広い場所で乗り降りし、その後に車を自動で駐車スペースに運ぶようなイメージだ」と、車利用のバリアフリー化にも役立つという。自動車メーカーには、完成車の保管場での車両搬送を提案している。

当面はサブスクリプションでのシステム提供を検討し、実際に使用してもらいながら〝次〟のアイデアを創出していくともいう。今後は「レベル4/5」の自動運転車とAVGロボットが混在するバレーパーキングも見据えながら「車を運ぶ」管制システムの高度化を目指す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月6日掲載