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2023年2月16日

日産 EV活用プログラム広がる、地球温暖化や災害対策など課題解決

日産自動車が推進している電気自動車(EV)活用プログラム「ブルー・スイッチ」が日本各地に広がっている。ブルー・スイッチは地球温暖化や災害対策などの課題解決を図るため、日本国内で電動化を推進するアクションプラン。日産のEV「リーフ」の国内販売が10万台を達成した2018年5月に活動を開始した。

全国の自治体や企業と、EVを活用した連携協定を締結し、23年1月19日には日産のお膝元である神奈川県とも締結して累計200件に達した。環境対応だけにとどまらないEV活用のメリットに対する理解がじわりと広がっている。

日本政府が50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)社会の実現を掲げたこともあって、走行時の二酸化炭素(CO2)排出量がゼロのEVは、自治体や企業の間で導入機運が高まっているが、EV導入のメリットはそれだけではない。自然災害が相次ぐ中で、停電時に「走る蓄電池」として建物に給電できるEVは、防災対策としても生かせる。これらが日産のブルー・スイッチ活動の追い風となっている。

ブルー・スイッチ活動をスタートした18年当時、日産のEVはリーフだけだったが、現在はSUVタイプの「アリア」、軽乗用車の「サクラ」も加わった。EVのラインアップ拡大で、選択肢が広がったことや、EVに対する関心の高まりによって、自治体や企業も日産のEVを活用する連携協定に前向きだ。

活動をスタートした18年度に連携協定を締結した先は15件にとどまる。それが19年度には累計55件、20年度には122件と増加ペースは上がり、21年11月には150件に達した。その後も着々と増えて、23年1月の神奈川県との締結で200件の大台を達成した。

ブルー・スイッチ活動では、自治体や企業が計画的にEVを導入するだけでなく、EVを活用したさまざまな取り組みも進んでいる。京都府とタクシー会社3社は、軽EVのサクラを使ったタクシーの運行を始めた。観光都市・京都が推進するカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環だ。タクシーの実車距離1㌔㍍ごとに10円を、京都で環境活動を行っている団体に寄付する。

日産はEVが環境対策に加え、災害対策に有効活用できることもアピールしている。日立ビルシステムと共同で、停電時にEVの電力でエレベーターを稼働させるV2Xシステムを実証した。バッテリー容量20㌔㍗時の軽EVのサクラからの電力だけで、日立標準型エレベーター「アーバンエースHF」を継続稼働した。この結果、6階建ての試験棟で、10時間以上の連続往復運転できることを確認、災害発生時の停電対策として活用できることを実証した。

EVを観光振興に活用する取り組みも始まった。熊本県阿蘇市と長崎県佐世保市では、EV利用証明の一つとなる「ブルー・スイッチカード」の運用を22年10月から始めた。以前から協定を締結した自治体とEV利用者への優遇施策を進めてきたが、さらに利便性の向上を図った。

また、電気を大量に蓄えることができるEVを、エネルギーマネジメントに活用する動きもある。NTT西日本は、太陽光発電の電力をビルで使用するのに加え、発電状況や電力の使用状況に応じて消費電力を予測、EVの充放電を制御して、効果的なピークカットの実現を目指している。

神奈川県との連携協定締結式で、日産の星野朝子執行役副社長は「日産から(ブルー・スイッチ活動を)営業しているというよりは、自治体側から『うちもやりたい』と、声をかけられ協定を結ぶパターンが多くなっている」としており、自治体側が環境対応や災害対策にEVを積極的に活用しようとの機運が高まっている。また、星野副社長は今後も「拡大していきたい。白地図が全部ブルーになることを願っている」と、全国の自治体や企業に広がることに期待感を示す。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月8日掲載