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2023年2月07日

古くて新しい「ドライブインシアター」 コロナ禍機に再び脚光

国内で最初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから3年が経過した。この間、3密(密閉・密集・密接)を回避するレジャーとしてドライブインシアターが注目され、上映イベントの開催や定期上映する劇場の誕生といった動きが見られた。3密回避の移動手段として自動車の所有が見直されたこともあり、イベント業界はドライブインシアターの需要開拓に注力。自動車業界も自動車の楽しみ方の一つとしてファミリー層や若者たちに広まることを期待している。

コロナ禍において、さまざまなイベントが相次いで開催中止や延期となるだけではなく、緊急事態宣言解除後も収容規制が続き、イベント業界は苦境に立たされた。映画館も不要不急のサービスとみなされ、時短営業や休業を余儀なくされた。営業の全面再開後も収容規制や館内飲食の制限、加えて巣ごもり需要にマッチした動画配信サービスとの競合などにより、収益が大幅に低下した。

日本映画製作連盟の日本映画産業統計によると、コロナ禍前の2019年の映画館(シネマコンプレックスを含む)の入場者数は1億9491万人、興行収入は過去最高の2611億8千万円であったが、コロナ禍となった20年は一転して入場者数が前年比45・5%減の1億613万7千人、興業収益は45・1%減の1432億8500万円へと大きく減少。21年は入場者数・興行収入とも少し持ち直したものの、厳しい環境は続いている。

この状況下、ハッチ(本間綾一郎社長)やバックヤード(綱島大輔社長)などの広告代理店・イベント企画運営会社が、自治体などと協力したドライブインシアターのイベントを開催するケースが急増。また、映画館運営業界では業界大手のイオンエンターテイメント(浅田靖浩社長)が定期上映するドライブインシアターの開設に力を入れた。

ドライブインシアターの劇場第1号は、1933年6月、米ニュージャージー州に開業した。子どもが騒いでも気にせずに映画を鑑賞できることがウリだった。その後、全米各地で農村部を中心に劇場が開設され、50年代末から60年代初頭をピークに、劇場数は減少へと転じたとされている。

日本においては、61年に神奈川県小田原市でドライブインシアターのイベントが開催され、翌62年11月には東京都立川市に国内初の常設劇場「ウェスタン・ドライブ・イン・シアター」が開業。常設劇場数は90年代にピークを迎えた後、2010年10月に神奈川県中郡大磯町の「ドライブインシアターOISO」(大磯プリンスホテル内)が閉館し、常設劇場や定期上映する場所はなくなっていた。

コロナ禍でのドライブインシアターの増加は、3密回避の安全性の高いイベントとして考えられたことによる。また、企画・運営側の中に米国映画で視たドライブインシアターのワンシーンに憧れた若者がいたこともある。

加えて自動車が個室となることで、乳幼児連れの家族も周囲を気にせずに映画を鑑賞できるということが消費者に受け入れられた。ドライブインシアターの特徴の原点が再認識された形となった。自動車の持つプライベート空間が、ドライブインシアターをカーレジャーの一つに再び定着させる勢いにあるようだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月2日掲載