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自動車産業インフォメーション

2023年1月26日

タクシー産業GXプロジェクト CO₂削減目指し本格始動

タクシー産業の脱炭素化を目指し官民連携による「タクシー産業GX(グリーントランスフォーメーション)プロジェクト」が本格始動した。モビリティテクノロジーズ(MoT、中島宏社長、東京都港区)が、タクシー事業者の電気自動車(EV)および充電器の導入を支援。

さらにタクシー運行に特化したエネルギーマネージメントシステム(EMS)も開発・提供して、2027年までに二酸化炭素(CO2)排出量で年間3万㌧の削減を目指す。事業規模は国の支援を含み最大280億円となる。

同プロジェクトには、全国約100社のタクシー事業者に加えて、自動車メーカーや通信・損害保険・電力・充電インフラ関連企業も参画する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、石塚博昭理事長)による「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金)の採択を受けて最長で31年まで実施する。

タクシー事業者には、トヨタ「bZ4X」、日産「アリア」などをベースとしたEVタクシーを31年までに最大2500台、リース提供する。対象車種は今後拡大する予定だ。充電器は最大2900台(急速充電器400台、普通充電器2500台)を各営業所に提供・設置する。

GI基金を活用することで、車両導入費用では1台当たり最大3分の2が助成され、充電器はタクシー事業者の実質負担がゼロとなる。走行に使う電力はMoTが再生可能エネルギーを調達・供給し、タクシー事業者は充電量に応じたチャージサービス料をMoTに支払う形となる。

また、充電器などの設備故障・不具合で運行不可となる経済損害のリスク補償として、あいおいニッセイ同和損害保険と新たな保険商品を企画開発。MoTが代理店として保険募集を行う予定だ。

1日の走行距離が自家用車と比べて約7倍のタクシーでは、事業者自身で長距離運転に耐えうる充電実施マネジメントを行うのは難しい。そのため、MoTはエリア特性に応じた運行距離や乗務実態を踏まえて、運行効率を損なわない充電計画を人工知能(AI)で自動生成するEMSを構築。31年までシステムの改良・技術検証を続けて、EV運行とエネルギーマネジメントに最適なシステムの開発・提供を進めていく。

18日には、参画事業者の日本交通横浜(金田隆司社長、横浜市戸塚区)の小田原営業所で、アリアのEVタクシーを報道陣に公開。MoTの中島社長ら同プロジェクト関係者が出席し、斉藤鉄夫国土交通相ら国交省関係者も現地を視察した。中島社長は「タクシー産業のカーボンニュートラル実現のきっかけとなるプロジェクトになれれば」と意欲を燃やす。

タクシー車両のEV化に向けた課題は大きく2つ。LPガス車両を前提とした現在の運行オペレーションをEVに最適なものに転換する必要があることと、電力を安定的かつ廉価に利用できるEMSを構築・導入すること。中島社長は「この両輪をしっかりと回していくことが課題克服に向けて非常に重要」と話す。

一方で、後続距離が長い新型EVが登場したことで「タクシー事業者の経営の意思決定を変える効果が出てきている」と(同)と指摘する。乗降性などタクシー車両ならではのニーズがあることから、EVタクシー利用者の声をもとに、MoTは自動車メーカーと改善点などを検証していく。タクシー専用EVが投入されれば「脱炭素化の大きな後押しとなるだろう」(同)。

タクシー車両の代替サイクルは7~8年で、トラックやバスと比べて圧倒的に短い。日本交通とMoTの川鍋一朗会長は「産業構造上、われわれが他産業に先駆けてカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成できるとの意気込みを持っている」と、同プロジェクトに対する強い自信を示した。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月23日掲載