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自動車産業インフォメーション

2023年1月25日

タイヤメーカー各社 サステイナブル素材開発にモータースポーツ活用

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指すため、タイヤに植物由来の原料やリサイクル素材を使う動きが本格化している。こうしたなか、タイヤ各社は「サステイナブル素材」の開発にモータースポーツを活用している。過酷な使用条件で品質や耐久性などを確かめつつ、市販用タイヤでもサステイナブル素材の使用率を高めていく作戦だ。サステイナブルの定義も含め、タイヤ各社の開発競争が続く。

【ダカールラリー】トーヨータイヤ

15日まで幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれた「東京オートサロン2023」に、トーヨータイヤは今年のダカールラリーを戦った「ランドクルーザー」の競技車両を出展した。装着されたレース用タイヤには、植物由来のブタジエンゴムやリサイクル素材のビードワイヤーなどが使われている。

同社は、2021年からトヨタ車体のダカールラリー参戦車をサポートしており、今年はサステイナブル素材を用いた。水谷保・執行役員技術開発本部長は「(材料の置換で)特性が変わるため苦労したが、今後も使用比率を高めていきたい」と話す。

すでに同社は、市販タイヤでも、転がり抵抗を減らす効果があるシリカを均一に分散させる「分散剤」を植物由来のものに置き換えている。欧州市場を念頭に入れたスポーツタイヤ「プロクセス スポーツ2」にも取り入れており、厳しい環境規制に適用するため、ドイツの研究開発拠点と連携して素材開発に取り組んだという。今後も新製品にサステイナブル素材を積極的に採用し、市販タイヤの使用率100%を目指していく。

【ソーラーカーレースや米インディ】ブリヂストン

ブリヂストンは、複数のサステイナブル素材を使用したソーラーカーレース用のタイヤを出展した。オーストラリア大陸を横断し、走行距離は3千㌔㍍にも及ぶ過酷なレースだが、優れた転がり抵抗など、過去に優勝した実績を持つ性能はそのままで、環境に配慮した材料に置き換えたという。

同社はまた、キク科の植物「グアユール」を原料とする天然ゴムを使ったタイヤも出展した。一般的に天然ゴムは「パラゴムノキ」から作られるが、原産地が東南アジアに偏在しており、気候変動や病害などの供給リスクがある。同社は、米インディカーレース用タイヤからグアユール置換を始め、昨年には実戦投入した。

【スーパーフォーミュラ】横浜ゴム

横浜ゴムは、今シーズンの「スーパーフォーミュラ」レースに、アブラヤシなどを原料とする配合剤や、リサイクルゴムを使用したタイヤを供給する。住友ゴム工業は100%石油外の天然資源で作られた「エナセーブ100」を13年に発売した実績を持つ。今後、リサイクル材の活用比率を高めながら、量産タイヤでの使用比率を30年に40%、50年に100%とする方針を掲げている。

海外でもサステイナブル素材の使用が進む。仏ミシュランは昨年10月に使用率45%、米グッドイヤーは今月、使用率90%の乗用車用タイヤを開発したとそれぞれ発表した。いずれも公道走行をにらんだものだ。

ただ、タイヤ業界には「サステイナブル素材は定義に曖昧な部分があり、(真の目的である)カーボンニュートラルを意識したい」(タイヤメーカーの開発担当者)と数字先行のPRを自戒する声もある。各社は、脱炭素社会への貢献に向けた効果を見極めながら開発に取り組んでいく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月21日掲載