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2023年1月19日

東京オートサロン2023 会場は水際対策緩和で賑わい再び

1月13~15日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「東京オートサロン2023」では、行動制限が緩和され、海外からも多くの訪問客を集めたことで、かつての賑わいが戻った。一方、足元では半導体不足による新車供給の遅れなどの影響がアフター業界にも及んでいる。こうした中、出展した企業・団体は制約下でのカスタマイズの模索や、次世代を見据えた新たな商品コンセプトの披露など、工夫を凝らして来場者の関心を集めた。

オートサロンの風物詩の一つが、カスタマイズされて登場する最新のスポーツカー。22年はトヨタ自動車の「GR86」やスバルの「BRZ」、オンライン開催となった21年はトヨタ「GRヤリス」など、前年に発売された新型車が会場を彩るのが通例だ。

ところが今年は新車需給のひっ迫で、カスタムメーカー各社の車両調達にも影響が波及。本来であれば、前回開催でメーカーが発表したホンダの「シビックタイプR」や日産自動車の「フェアレディZ」がそろい踏みするはずだったが、新型車の改造車を出展できたブースは限定的だった。

塗料や樹脂部品などの値上がりから、車両だけでなく部用品の確保にも困難が生じた。ある整備専門学校の教員は、「協賛企業に依頼した製品が、材料取得の難しさから見送られた」と明かす。別の学校の教員も「協賛企業に対して例年以上に経済的な協力をお願いした」と、苦しい台所事情を打ち明ける。とりわけ限られた予算の中で制作を進める教育機関にとって、このところの物価高騰が直撃した格好だ。

新車供給遅れが本業に響いたアフター関連企業も少なくない。トヨタ系販売店向けのカスタマイズパーツを手掛けるサンショウ(山本新一社長、浜松市東区)の小栁津鐵郎取締役エグゼクティブアドバイザーは、「新車供給の改善に合わせてしっかりとユーザーに訴求したいが、販売店のスタッフは長納期対応などで、当社商品の訴求にまで手が回らない事例もある」と明かす。

それでも2年連続2回目の参加となる今回は、トヨタの「ヤリス」向けシートカバーを出展し、「今春の発売に向けて女性ドライバーを中心にアピールしたい」と意気込む。

制約下での活動を余儀なくされる中でも、時流に沿った特色ある展示を用意した企業もある。7年ぶりに出展したビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン、長谷川正敏社長、東京都港区)は、純正カスタマイズパーツなどの展示に加え、整備部門を紹介するコーナーを初めて設けた。長年の課題となっている整備人材の確保について、注目度の高い〝カスタマイズの祭典〟で話題を提起していた。

市販シート大手のブリッド(高瀬嶺生社長、愛知県東海市)は、SDGs(持続可能な開発目標)に対応する製品を提案した。リサイクルペットボトルの繊維を織り込むなど環境負荷を低減する素材を用いたコンセプトモデル「SDGsコンセプト・ストリームス」を発表。SDGsを主眼に置いた製品開発は、同社として初の取り組みという。

電気自動車(EV)も注目を集めた。自前の工場を持たないファブレス企業のHWエレクトロ(蕭偉城社長、東京都江東区)は、中型バンタイプの新型EV「エレモ―L」を初披露。併せてカーコンビニ倶楽部(林成治社長、東京都港区)との包括的戦略業務提携の締結も発表し、販売、サービス両面で事業拡大に向けた体制を整備する。

収束しないコロナ禍に加え、物価高騰などの新たな問題も立ちはだかるアフター市場にあって、オートサロンは各社の底力を示す機会となった。逆風を乗り越えた次回開催に、早くも注目が集まる。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月16日掲載