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2023年1月16日

自動車メーカー、レース活動を再始動 三菱自とダイハツはラリー

中堅自動車メーカーが、モータースポーツに再び力を入れている。ダイハツ工業はトヨタガズーレーシングの「ラリーチャレンジ」へのフル参戦を表明したほか、世界ラリー選手権(WRC)参戦への検討も開始した。マツダや三菱自動車も昨年から、国内外のレースに本格的に参画している。

かつて経営悪化で、モータースポーツから離れた3社。足元で脱炭素や世界市場の競争激化を見据えた技術革新やブランド力の強化に迫られる中、レースを通じた技術の高度化やブランドイメージの向上に挑む考えだ。

3社がモータースポーツ活動を大幅に縮小したのは、1990年代前半のバブル崩壊と、2008年のリーマン・ショックの時。業績悪化を受け、コストがかかるレース参戦を見直す決断をした。マツダは1991年、日本車で初めて世界最高峰の耐久競技「ル・マン24時間レース」で優勝。その金字塔を打ち立てた翌年の92年には撤退を発表した。

三菱自も過去、何度も総合優勝を獲得した「ダカールラリー」の参戦を2009年に終了。ダイハツも同年、モータースポーツ活動から退くことを明らかにした。

その3社が22年、モータースポーツ活動を本格的に再開した。マツダは新たに立ち上げた「マツダスピリットレーシング」で、スーパー耐久シリーズにフル参戦。三菱自も「チーム三菱ラリーアート」としてアジア最大の国際ラリー大会に出場し、ピックアップトラック「トライトン」で総合優勝した。

ダイハツは誰でも参加できる「チャレンジカップ」を14年ぶりに開催。今年からはトヨタのラリーチャレンジにも参戦する。新たに専門の組織を社内に立ち上げるなど本腰を入れる。

自動車メーカーがモータースポーツに取り組む大きな理由は、厳しい戦いの中で得た知見やノウハウの市販車開発へのフィードバックだ。例えば、バイオディーゼル車でスーパー耐久に参戦するマツダは昨秋、「DSC(横滑り防止装置)トラック」と呼ぶ新しい制御技術の開発にもレースの現場を活用し始めた。

DSCトラックはサーキットを安全かつ速く走行できるように、横滑り防止装置の制御を最適化する技術。マツダが支援する一般ユーザー向けのレース「ロードスター・パーティレース」の車両に搭載した。一般ユーザーの近くで走らせ、クルマ好きの要望を取り込みやすくし、市販車への早期応用につなげる考えだ。

一方、三菱自のレース再参戦には、主力の東南アジアで市販車のシェア拡大に向けた狙いがある。現地で売れ筋となっているピックアップトラックは、トヨタ自動車といすゞ自動車の競争が激しくなっている。

この中で、三菱自のシェアは低下している。市販車をベースにしたレースに勝つことで、走行性能の高さを分かりやすくアピールし、受注拡大を目指す。また、今年は全面改良も控えており、新型モデルの拡販に弾みをつける構想だ。

また、モータースポーツは、世界中に多くのファンを抱える。ここで自社の技術力や速さをアピールすれば、ブランド力の強化にもつながりやすい。新車の販売増への効果が期待できるほか、オリジナル用品の展開など新たなビジネスチャンスになる可能性もある。

リーマン・ショック以降、トヨタ自動車をはじめ、大手メーカー中心で取り組んできたモータースポーツ。中堅メーカーにもその輪が広がることで、今後、国内外でのレースのさらなる盛り上がりが期待できそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月12日掲載