2023年1月13日
中小製造業 次世代車向け技術開発や新規事業、攻めの姿勢で受注目指す
次世代車向けの技術開発や新規事業などに挑む動きが中小製造業で広がりをみせている。吉田鉄工所(吉田勝彦社長、群馬県前橋市)は電気自動車(EV)用バッテリーケース部品を開発した。スギヤマ(杉山隆秀代表取締役、愛知県蟹江町)もセンサー向け金属部品を開発中だ。
部材やエネルギー、輸送費の高騰による影響は中小ほど大きく、大手と違って対策にも限りがある。ただ、縮小均衡だけでは展望が描けないと、省力化投資も含めて「攻めの姿勢」を見せる。
吉田鉄工所はもともと、車両のプレート・アダプターやケースディファレンシャルなどの駆動系部品を手がける。コロナ禍の減産で自動車関連部品の売り上げは目減りしているが、新たにバッテリーケース部品を開発した。国産勢も品ぞろえを増やすEV向けに受注を目指す。
燃料噴射装置の空燃比フィードバック制御に使用する部品を製造するスギヤマもセンサー向けの金属部品を開発している。自社技術を生かし、金属と樹脂を組み合わせた部品の開発にも着手した。杉山裕一専務取締役は、自動車産業や異業種向けなど「提案活動を強化する」と話す。
電子燃料噴射装置の部品を手がける小松精機工作所(小松滋社長、長野県諏訪市)。デンソーや愛三工業などと取引するが、小松社長は、コロナ禍の減産で「売り上げが数十%落ちた」と語る。このため、市場が拡大する内視鏡鉗子向けの部品を試作した。自動車部品で培ってきた高精度かつ高品質なプレスや切削技術を生かす。試作した鉗子先端部品は、世界最細径クラスの直径0・5㍉㍍という。
絹川工業(泉昇志社長、石川県白山市)は高価なロボット溶接機やファイバー溶接機を買い入れた。同社はトラックの荷台に利用するフレーム部品を手がける。足元の売り上げは、部品不足による減産や日野自動車の出荷見合わせなどで回復途上だ。しかし、少子化対応や高付加価値品の開発に欠かせないと、最新設備を導入する。
中小企業基盤整備機構(豊永厚志理事長)の中小企業景況調査(2022年10~12月期)によると、業況判断DI(良いと回答した企業割合から悪いと回答した企業割合を引いた指数)はマイナス22・9と2期連続で悪化した。同機構は「中期的には回復基調にあるが、原材料高騰や人手不足等が直近の押し下げ要因になっている」とみる。
製造関連企業からは「受注はコロナ禍前と同水準で頂いているが、材料・資材が長納期となっており、要望に応えられない」「部品の調達難は若干、緩和されてきているが、原材料価格の高騰が収益面で厳しくなっている」などの声があがる。
大手と比べ経営資源に限りがある中小企業。事業環境が悪化すると縮小均衡に陥りがちだが、一部の企業は激変する自動車産業で新たな商機をつかもうと挑戦を続ける。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月24日掲載