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2023年1月13日

日刊自連載「回顧2022年」(5)輸入車 中韓勢が国内EV市場に攻勢

2022年の輸入車市場は電気自動車(EV)シフトが加速する中で、新たなプレーヤーの台頭など、かつてない変化に満ちた。1~9月までの輸入車市場は全体需要が落ち込む中、新車の累計販売台数に占めるEVのシェアが4・7%となり、前年同期比2・0㌽増加。台数も同46・7%増の8307台と好調だった。

ただ、世界的に見ると、日本のEV市場は極めて限定的で伸びしろがある。ここに商機を見い出す中国や韓国勢が攻勢をかけており、これまで輸入車市場をけん引してきた欧米勢とは異なる選択肢として注目を集め始めた。

韓国・現代自動車の日本法人ヒョンデモビリティジャパン(趙源祥社長、横浜市西区)は2月、EVと燃料電池車(FCV)で約12年ぶりに国内乗用車市場に再参入すると発表。販売手法は米テスラと同様、店舗網を持たずオンライン販売に一本化した。一方、ブランド発信や整備のための直営拠点を整備するなど戦略的な投資策も打ち出し、日本市場への定着を目指す。

7月には中国・比亜迪(BYD)の日本法人ビーワイディージャパン(BYDジャパン、劉学亮社長、横浜市神奈川区)も乗用車事業への進出を発表。これまで、EVバスなどを国内に導入していたが、乗用車も本格的に事業を展開する。販売手法はヒョンデと対照的に、実店舗を軸とする計画。23年1月の乗用EV「アット3」の発売を皮切りに、25年時点で全国100店舗に拡大する青写真を描く。

日本で顧客基盤がない新興勢にとって、最大の訴求点になっているのが価格競争力だ。アット3は最長航続距離485㌔㍍(WLTCモード)を確保しつつ440万円(消費税込み)からと、競合ブランドより安価に設定。実用性を重視する法人需要を開拓できれば、一気に普及する可能性がある。

既存インポーター各社も価格競争力の高いEVを相次いで導入し、新たなライバルを迎え撃つ。フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)はアウディ「Q4e―tron(イートロン)」やフォルクスワーゲン「ID.4」を投入。

それぞれ、約600万円から、約500万円からに設定。割高感のあった欧米ブランドのEVのハードルを引き下げた。このほかのインポーターもEVラインアップ拡充を推し進める。

一方、輸入車の市場全体は苦境が続いた。外国メーカー車の新規登録台数は9月まで13カ月連続で前年割れ。10月以降はプラス基調が続くものの、暦年実績は2年ぶりの前年割れが避けられない情勢だ。足元では販売回復の兆しが見え始めたものの、ロシアによるウクライナ侵攻も収束を見通せず、輸入車の供給に不可欠な国際輸送の安定などにはいまだ不確定要素が残る。楽観視はできないのが実情だ。

また、この1年は円安をはじめとする値上げ圧力も各社を悩ませた。相次ぐ価格改定により、モデルによっては1年ほどの間に100万円近い値上げとなる事例も出た。首都圏の販売会社の首脳では「顧客の理解を得るにも限度がある」とため息をつく。

ただ、あるインポーター幹部は「台当たり利益率を下げれば、日本向け出荷台数の確保にも影響が出る」とも打ち明ける。円安こそ一服したものの、原材料費や輸送費の高騰はいまだ大きな課題として残る。各社がこれらのリスクヘッジ体制を確立できるかも、23年の注目点になりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月27日掲載