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2023年1月11日

日刊自連載「回顧2022年」(3)リサイクル 将来見据え事業構成見直し進む

自動車リサイクル業界は2022年、前年に続き使用済み自動車の発生台数低迷に悩まされた。自動車リサイクル促進センター(JARC、細田衛士理事長)によると1~11月の発生量は前年同期比約13%減の255万台にとどまった。

厳しかった21年をさらに下回った格好。これが使用済み車の仕入れ価格上昇につながっており、さらにリサイクル部品の出荷に必要な運送費や梱包用資材費の値上がりも追い打ちをかけている。リサイクル事業者の多くはすぐに状況が改善する可能性が低いとみており、将来を見据えてリサイクル以外の新たな事業に取り組む動きもみられた。

「入庫台数が過去に例がないほど少なく、ここまで厳しい市場環境は初めてだ」と、日本自動車リサイクル部品協議会の佐藤幸雄代表理事はため息をつく。自身が経営する共伸商会(新潟市北区)も月間の処理台数が落ち込む。「21年は1千台を超えることも多かったが、最近はこの水準を下回っている」と明かす。

実際、リサイクル事業者の使用済み車の仕入れ環境は深刻さを増している。コロナ禍前の19年1~11月は約312万台となっており、今年の実績との差が大きく開いている。新車の供給遅れや中古車ニーズの拡大に加え、円安が進んだことで輸出業者との競争激化が響いたとみられる。

厳しい環境下でも会社を維持するため、リサイクル事業者では中古車オークション(AA)を活用した仕入れを増やす動きも目立っている。3R(宮永泰延社長、埼玉県久喜市)の山口徳行最高顧問は「リサイクル料金を払って部品取りするための車両を仕入れている状況で、事業者の経済的負担が増えている」と指摘する。「AAの相場も随分上昇しており、仕入れコストが経営を圧迫している」と厳しい実情を訴える。

苦境を乗り越えようと、各社は1台から取り出すリサイクル部品の量を増やすなどし、生産性向上に取り組む。しかし、「努力にも限界がある」「新車の回復が、ある程度軌道に乗らないとどうにもならない」との声は多く、根本的な打開策にはなっていないようだ。

一部のリサイクル事業者では整備や中古車のリースに力を入れるなど、本業のリサイクル以外のビジネスを伸ばす動きも出ている。整備事業者や車両販売店など従来の仕入れ先に頼らず、一般ユーザーから直接買い取りを目指す事業者もみられる。

一方で、厳しい市場環境の中でも、社会貢献への取り組みも進んだ。9月に静岡県で発生した大雨による大規模災害では、NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(小林信夫理事長)やJARAグループ(川島準一郎理事長)の会員企業などが現地で迅速に臨時ヤードを開設するなどし、車両の引き上げに協力した。こうした被災車両の対応を目的とした新組織、エートス協同組合(宮本明岳理事長)も立ち上がっている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月24日掲載