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2023年1月06日

日刊自連載「回顧2022年」(1)整備 制度改正へ準備・対応続々

新型コロナウイルスの感染拡大がいまだ予断を許されない状況の中で、かつての日常を取り戻しつつある自動車流通業界。ただ、半導体をはじめとした部品不足による新車の長納期化の問題は解消していない。さらに、物価やエネルギー価格の高騰という新たな課題も抱えている。日々変化する国内外の環境への対応を迫られた整備や用品、リサイクル、中古車、輸入車、国産車の1年を振り返る。

整備業界は矢継ぎ早の制度改正への準備や対応に追われている。特定整備制度や1月からの車検証の電子化や記録等事務代行制度など整備作業から関連業務までと多岐にわたる。2024年10月には車載式故障診断装置(OBD)を活用した自動車検査(OBD検査)のスタートも控えており、当面の間は否応なしに変革への対応を迫られることになる。

こうした状況の中でも、特定整備への対応は今年も活発ではなかった。国土交通省がまとめた11月末の認証件数は4万631件(うち自動運行装置は216件)にとどまった。業界の見方では認証取得準備のための経過措置が終了する24年3月までに、7~9割の事業場が認証を得る見込み。

ただ、予想とは裏腹に、経過措置が残り約1年となる中で、取得率が約9万2千の認証工場のうち、全体の5割にも達していないのが現状だ。大方の予想通りにいけば、来年度末にかけて申請が殺到する可能性があり、認証取得までにかかる期間の長期化が避けられない。既に要件を満たした事業場であれば、早期の対応が必須となりそうだ。

人材関連では2つの大きな動きがあった。昨年度から車体整備士の二種養成講習を受講できる条件に「各種電子制御装置の点検、調整等に係る整備作業」が加わった。これにより、自動車ガラス修理事業者が日常的に行うエーミング(機能調整)作業の実務経験で、取得を目指せる資格が「車体整備士」と「電気装置整備士」の2つに広がった。

「特殊整備士」の二養講習の開催地は特定整備の施行以前よりも増えたが、受講が難しいエリアも依然としてあった。自動車ガラス修理事業者の選択肢が広がったことで、認証工場以外の認証取得にも弾みがついたとみられる。

また、8月末には特定技能制度の自動車整備分野で、主な業務に板金塗装(BP)が加わった。これにより、整備の関連業務として一部の時間しか携われなかった特定技能外国人が専従できるようになった。車体整備部門でも日本人の人材不足の課題を抱えており、外国人の活用が不可欠な状況だ。特定技能でBPに関する業務範囲が広がることで、こうした課題の解消に向けて一歩を踏み出した格好だ。

この3年はコロナ禍の水際対策で外国人人材の活用が停滞していた。徐々に制限の緩和が進めば、外国人人材の活用の動きが活発になることが期待できそうだ。

今年の整備業界はまず、自動車検査証(車検証)の電子化がスタートする。電子車検証の発行には紙の車検証よりも時間が掛かる見通しで、電子車検証に完全移行するまで運輸支局の窓口の混雑が予想されている。ただ、中長期的には指定整備工場の車検関連業務の効率化が見込まれており、業務にデジタル化を取り入れる機会となる。また、OBD検査の開始に向けた検査用アプリのリリースやプレ運用も始まる。続けざまの制度改正を好機と捉えてさらなる成長に取り組むか否か、整備事業者の深化が問われる1年となりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月22日掲載