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自動車産業インフォメーション

2022年12月27日

国内鉄鋼メーカー各社 自動車向け鋼材の脱炭素化促進

国内鉄鋼メーカーが自動車向け鋼材の脱炭素化を進めている。足元では製造工程で削減した二酸化炭素(CO2)削減量を特定製品に割り当てる「マスバランス方式」を用いた提案を強化しており、19日には日産自動車が初めて量産車への採用を決めた。

鉄鋼各社は、鉄スクラップなどを原料とする電炉の利用拡大などでCO2排出削減を進めているが、高炉と比べると、自動車向け高級鋼材の製造は技術的に難しい。低CO2製品に対する需要が高まる中、各社は即効性のあるマスバランス方式を活用しつつ、電炉で高級鋼材を製造する技術開発を急ぐ。

マスバランス方式による低CO2高炉鋼材をいち早く発売したのは神戸製鋼所だ。今年5月、天然ガスを使用する還元製鉄法「ミドレックス技術」を活用し、高炉工程で削減したCO2を割り当てる「コベナブルスチール」を国内で初めて商品化した。

第三者機関からCO2排出量削減効果の承認を得ており、1㌧当たりのCO2排出量を100%減らした「コベナブルプレミア」、50%減らした「同ハーフ」の2グレードを設定している。

コベナブルスチールは、同社が2020年度にミドレックス技術を使って鋼材を製造したことで削減した2万1241㌧分のCO2排出量を割り当てている。コベナブルプレミアは重量ベースで8千㌧、同ハーフは1万6千㌧を供給する予定だ。

日産が量産車への採用を決めた低CO2高炉鋼材はコベナブルプレミアだ。具体的な使用量は協議後に決まるが、神戸製鋼が提供できる8千㌧の範囲内となる。

日本製鉄もマスバランス方式を活用する。同社は、電炉による製造工程で削減したCO2削減量を既存の鋼材製品に割り当てたカーボンニュートラルスチール「NSカーボレックスニュートラル」を23年度上期に市場投入する。

瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)で10月に商業運転を始めた電炉で削減したCO2削減分を割り当て、23年度はCO2排出量実質ゼロの鋼材換算で30万㌧を供給する予定だ。

広畑地区ではまた、電炉一貫でハイグレード電磁鋼板を製造するノウハウも蓄積していく。30年度までに、自動車外板用などの高級鋼板を大型電炉で製造する技術の確立を目指す。

JFEスチールも電炉の導入を進める。西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)の高炉が改修を迎える27~30年に大型電炉を新設する計画だ。高炉からの転換により、年間300万㌧のCO2排出削減効果が見込めるという。

倉敷地区では現在、3基の高炉が稼働しており、自動車向け鋼板も生産している。今後、鉄スクラップなどを電気で溶かす電炉で高級鋼板を製造する技術の実用化を目指す考えだが、実現に向けたハードルは高い。

「外板材のハイテンなど軽量化技術に対応する高級鋼板については、現時点では電炉技術が追いついていない」(同社)という。今後、不純物が少ないスクラップの確保なども含め、技術開発を急ぐ方針だ。 

自動車メーカー各社は、サプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量削減に本腰を入れており、仕入先に対して生産活動でのCO2排出量削減を求め始めた。鉄は自動車の約6割(重量ベース)に使われる主要部材であり、鉄鋼各社による脱炭素の取り組みは、自動車産業のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を実現する上でも必要不可欠だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月22日掲載