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2022年12月09日

福島の震災からの復興に官民協力 地域イベントでSDGs浸透図る

福島県では、東日本大震災からの復興を官民が協力しながら進めている。ウィズコロナの生活様式が浸透し始め、コロナ禍で中止されていた地域振興のための催しも再開され始めた。地域の活性化や交流を図りつつ、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)をテーマに盛り込み、地域の魅力発信につなげる動きも活発となっている。

日産自動車は、浪江町で3年ぶりに開催された「十日市祭」に協力し、町内で実施するオンデマンド型の乗合サービスや復興に向けた施策を紹介した。イベントを盛り上げるとともに、街づくりや電気自動車(EV)の活用による環境負荷低減に取り組んでいる点を訴求した。また、新型車の開発を担当したエンジニアらによるトークセッションを開催し、自動車開発における考え方や苦労などを伝えた。

同社は、浪江町で「なみえスマートモビリティ(スマモビ)」を運行し、住民の移動や買い物支援を行っている。このサービスは、町内の主要拠点に設置したデジタル停留所やスマートフォンから配車ができるもので、移動支援を通じた地域の活性化を目的としている。十日市祭では、会場となったスポーツセンターに停留所を設け、自動車を保有しないユーザーも来場しやすい環境を整えた。

当日は子ども向けのEVモデルカー作成教室「わくわくエコスクール」を行ったほか、日産と関連企業が浪江町を中心に取り組む持続可能な街づくりについての講演も行った。

日産が商社と立ち上げたフォーアールエナジー(堀江裕社長)は、EVに搭載しているバッテリーの再利用事業について紹介。同社は2010年のEV「リーフ」発売に合わせてバッテリー再利用を目的とした事業を開始。18年には町内に事業所を開設した。

使用済み自動車などから取り外したユニットを検査後、残存性能に合わせて製品として提供している。EVに再度搭載する以外にも、ゴルフカートや踏切の非常電源などに使われている。

今後は、回収規模を拡大しつつ、蓄積した技術を欧州へ展開する計画を立てている。また、新事業として「eパワー」で使用するユニットの製品化にも取り組む。堀江社長は「eパワー搭載モデルは、(ピュアEVの)リーフの10倍の販売台数となっている。バッテリーの容量は異なるが、リサイクル事業者などと協力して活用方法を模索する」と、新たな需要開拓に取り組む考えを示した。

そのほか会場には、伊達重機(前司昭一社長)がトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「ミライ」を展示し、県内で進む水素の利活用をアピールした。同社はミライのリース事業を手掛けており、12月には県内3カ所目となる定置式水素ステーションを町内に開所する。

また、道の駅なみえでは、十日市祭に合わせた催し「NISSANなみえフェス」も開催された。同社が保管するクラシックカーや最新モデルの展示、EVに関する技術解説などを行い、来場者を楽しませた。

EV試乗会として、福島日産(金子與志幸社長)が用意したリーフで、エコドライブ講習を行った。静粛性や加速力に驚くユーザーも多かった。リーフを気軽に試乗できる機会を設けることで、EVの需要喚起を図った。

イベントへの出展を企画したメーカー担当者は、スマモビによる移動支援に加え、街のにぎわいづくりにも力を入れていることを強調し「住民との交流の中で、古くから日産に愛着を持っているユーザーが多いことが分かった。新旧のモデルを用意することで老若男女に興味を持ってもらえる内容とした」と説明する。

日産は今後も、移動支援サービスやEVの普及による環境負荷低減と防災力強化などを図り、新しいサービスの創出と地域復興を継続していく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月30日掲載