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2022年12月06日

自動車リース各社 脱炭素対応の法人や自治体へEV提案を加速

自動車リース事業者が、脱炭素への対応が迫られる企業や自治体への電気自動車(EV)提案を加速している。法人ユーザーでは充電時間の集中緩和(ピークシフト)など複数車両の効率運用に向けた課題もあり、導入のハードルは決して低くない。

こうした中、リース各社は実車や実機を用いた体験機会の提供に力を入れる。顧客の不安を払拭(ふっしょく)するとともに、EVならではの付加価値を訴求し、取引拡大を狙う。

東京ガスは11月中旬、東京都荒川区の拠点に自治体の担当者や卸先のガス事業者を招き、EV勉強会を実施した。座学と実車見学を組み合わせたプログラムには14自治体と11企業から計50人が参加。最新のEVや充電器をはじめとする周辺機器のほか、同社が提供する集合住宅向け充電サービス、実証中の充電制御技術などを紹介した。

参加者がEVに関心を持つ背景はさまざまだ。地域のガス会社は脱炭素に伴うガス需要の将来的な変動をにらみ、新たな商材としてEVに活路を見い出す。自治体では災害時に使える非常用蓄電池としてのEVの付加価値にも着目している。

こうしたニーズに応えるべく、車両管理の実務を担うリース会社はEV活用事例の周知などに取り組む。東京ガスの勉強会には、2018年に同社の自動車リース事業を継承した日本カーソリューションズ(NCS、髙島俊史社長、東京都千代田区)も参画。法人向けで培った運行管理の実績に基づく自社サービスを提案した。EVの走行経路や時間、運転傾向などに基づいた最適な運用支援などを実演した。

三菱オートリース(中野智社長、東京都港区)は今年に入り、軽EVや二輪EVなど、テーマ別の試乗会を相次いで実施した。11月には法人向けに最長1週間の利用が可能なEVの無料貸し出しサービスも開始。長期にわたる利用で充電の手順や実際の航続距離などの特徴を実体験できる機会を提供し、EV導入を検討する法人ユーザーが自社の業務との親和性を確認しやすくする狙いだ。

新車市場におけるEVの販売比率は1~2%程度といまだ低水準。航続距離や充電インフラの整備状況など、普及に向けた課題は山積している。一方、脱炭素への貢献を可視化したい企業や自治体によって、EV導入には利点があるとの認識も広がりつつある。

個人ユーザーは販売店で気軽に最新のEVを試乗できる半面、法人や自治体では自らの利用形態に即した使い勝手を確認できる場は限られている。東京ガスの勉強会でも参加者から「間近でEVに触れたのは初めて」との声が目立った。従来のクルマとは大きく異なる製品ゆえ、特徴を正しく伝えるためには、実体験を交えた新たな訴求策が今後も求められそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月3日掲載