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2022年11月16日

使用済み車載電池、再利用へ取り組み広がる 将来の大量発生にらみ

使用済み車載電池を再利用するスキームづくりが広がってきた。パナソニックホールディングス(HD)は、再利用に最適な時期や用途が判断できるクラウドサービスの提供を開始。DOWA HDは、車載リチウムイオン電池から正極材をリサイクルすることに成功した。JFEエンジニアリングは有用金属の回収と再資源化の検討に入った。

急速な電気自動車(EV)シフトに伴い、リチウムなどの原材料不足が懸念されている。各社は、廃電池の大量発生をにらんだ事業モデルをつくるとともに、電池サプライチェーン(供給網)の安定にもつなげていく。

パナソニックHDが提供するクラウドサービスは「BetteRRRy」。同社と北京四維図新科技の合弁会社である「パナソニック四維モビリティテクノロジーサービス北京(松下四維)」が中国で提供する。電池データから劣化状態をリアルタイムで可視化するもので、使用済み車載電池を再利用する際の用途やタイミングを容易に判断できる。

中国ではEVなど新エネルギー車(NEV)の普及が進み、電池の流通量も増えている。古くなった車載電池を効率的に再利用することが課題となっており、松下四維は中古電池の残価査定やリユース電池の利用を促す保険サービスの提供を支援。車載電池におけるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の形成につなげる。

廃電池を原材料に再生する「マテリアルリサイクル」の取り組みも進む。DOWA HDの子会社であるDOWAエコシステムと秋田大学は、熱処理で不活性化した使用済みリチウムイオン電池から回収した正極材成分を、再び正極材として製造することに成功した。

既存電池と同等の蓄電容量と充放電性を確保したという。今後は、不純物と電池性能の関係を解明しつつ、効率的に不純物含有量を制御できるプロセス開発に取り組む。

JFEエンジニアリングも、高純度のニッケルやコバルトなどを効率的に取り出す手法をJFEスチールの協力を受けて開発中で、事業化も視野に入れる。

車載電池の需要は、世界的なEVシフトを背景に拡大を続ける一方、膨大な電池需要をまかなう原材料の不足が懸念されている。原材料の確保には資源開発だけでなく、使用済み車載電池の有効活用が不可欠で、各社は持続可能な電池サプライチェーンの構築と事業化に取り組む。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月10日掲載