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2022年10月26日

トヨタ南海グループ 整備士不足対応へベトナム人材活用

トヨタ南海グループ(久保尚平社長)のベトナムと日本をつなぐ整備士育成・送出プログラム「Nankai’S 」が本格的に動き始めた。今夏、同プログラムで教育を受けたベトナム人材を初めて受け入れ、11月上旬には第2期生が来日する。国内の整備士不足解消とベトナム人整備士が日本で健全に働ける仕組みづくりの両立を目指す同プログラムの拡大は、日越自動車業界双方の発展につながりそうだ。

整備業界では人材不足が深刻化している。課題解決の一手として外国人技能実習制度の活用が進むが、借金を背負って来日する技能実習生の存在や事前教育の不備といった問題も少なくない。

2017年にベトナムに現地法人のトヨタ南海ハイフォンを設立し、新車販売店を構える同グループは、両国の課題解決につながる整備士人材の活用方法を模索。ベトナムの人材に現地で事前教育を行い、日本で整備士として働くNankai’S を立案し、20年1月に第1期生の事前教育を開始した。

技能実習制度の課題の1つである金銭的負担を無くすために、無借金で教育を受けられる仕組みを導入した。プログラムの受講者はトヨタ南海ハイフォンで働きながら、座学や実習に臨める。

日本語教育にも注力する。技能実習制度で必要な日本語能力「N―5」よりも高度な「N―3」を習得するカリキュラムを設定。N―3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」水準であり、来日してもコミュニケーションに困らないレベルの日本語能力を習得させる。

現地では、日本の国家1級整備士資格を持つ日本人の下で、2級資格を持つベトナム人講師が教育を担う。受講者の成長のために、日本で培ったノウハウも活用する。

国内の整備士養成校を卒業した留学生を17年から採用している。彼らの育成を通じて得た知見をNankai’S にも利用する。また、10年に分教場を社内に設置するなど、もともと整備士教育に熱心な土壌も持つ。これらを現地に持ち込むことで、来日後、12カ月点検をこなせる即戦力に鍛え上げる。

プログラム開始直後に新型コロナ禍が生じ、事前教育期間の延長や来日時期の後ろ倒しを余儀なくされたが、今年6月に第1期生3人が同グループの国内店舗で働き始めた。Nankai’S では来日の際、「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得させ、同グループが直接雇用する。

21年10月には第2期生の事前教育がスタートした。コロナ禍の影響を受けつつも8~9カ月間の事前教育を終え、11月上旬に来日する。第2期生は総勢22人。第1陣が13人で、さらに第2陣として9人の来日を予定する。

プログラム受講者からの期待も大きい。Nankai’S の担当者は「将来的にベトナムで自動車の修理・販売を行う店を持ちたいという夢を持つ受講者もいる。彼らのキャリアアップにつなげたい」と意気込む。

同グループにとって整備士人材の確保というメリットがあるNankai’S だが、SDGs(持続可能な開発目標)活動の側面も持つ。「働きがいも経済成長も」などのSDGsの目標と合致する。

次の段階として「仲間づくり」を見据える。今後はグループ外とも連携し、社会課題を解決する仲間を増やしていく意向だ。プログラムの規模を拡大し、より持続可能な仕組みの構築を目指す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月21日掲載