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2022年10月21日

自動車業界「軽トラ市」支援強化 〝地域の元気〟に一役

「全国軽トラ市」が16日、長野市の篠ノ井駅東口駅前通りで3年ぶりに開かれた。近隣の商店や農家の加工品、農作物のほか、全国から持ち寄られた特産品を目当てに多くの人々が来場し、駅前通りをにぎわせた。軽自動車のメインマーケットは地方だが、その地方では人口減少が進む。「軽で地方を元気にしたい」。こうした思いから自動車業界でも軽トラ市を支援する動きが広がっている。

軽トラ市は2005年に岩手県雫石町で始まり、今では全国100カ所以上で定期的に開催されるイベント。その中で1年に一度、開催されるのが開催地の県外などからも出店者が集まる全国軽トラ市だ。今回の会場では100を超える出店者が特産品を軽トラの荷台に並べて販売した。

現地にはスズキの鈴木俊宏社長やダイハツ工業の奥平総一郎社長も訪れ、「頑張って売ってくださいね」「それ、安いですね」「完売、ご苦労さまです」などと、出店者一人ひとりとの会話を楽しんだ。自動車小売業でも販売のオンライン化が進みつつあるものの、鈴木社長は「だからこそアナログの良さが浮かび上がる」と、軽トラ市の魅力を挙げる。

自動車業界も支援を広げている。当初はスズキの鈴木修相談役が中心に支援してきたが、今回の軽トラ市では日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)や長野県軽自動車協会(関本一男会長)の会員ディーラー、日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)といった業界団体や企業が出展。自工会では21年4月に軽トラ市を支援する分科会を発足し、軽トラ市へのブース出展のほか、イベントの告知などでの支援も開始した。

自動車業界が軽トラ市への支援を強めるのは、軽自動車ビジネスが地方の活性化なくして成立しないためだ。自工会の軽自動車委員長を務める奥平社長は「軽を中心に地域が盛り上がることで、(軽自動車メーカーの)われわれは成り立つ」と話す。

軽の都道府県別保有率は都市部に比べて地方が高く、100世帯当たりの普及台数は東京都が12台と最も低いのに対して、長野県や鳥取県、佐賀県、島根県といった地方の県では100台を超える。ただ、そうした地方の県では少子化や都市部への人口集中などを背景に人口減少が進んでおり、国内専売に近い軽の存続のためには地域の活性化が欠かせない。

地域計画を専門に研究し、軽トラ市を支援する戸田敏行愛知大学教授は「固定型商店街ではなく、軽を使った可動型商店街であれば地域は活性化し、軽の需要も生まれる」と指摘する。自動車業界では、軽トラ市を人口減少地域の活性化と軽自動車事業の存続という2つの難題を解決する一つの答えと捉え、今後支援を強化していく考えだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月18日掲載